第301話 高宮君の怖い話~遺品整理業者中編その1~

「こ、この部屋か?」

「はいっす。」

足跡のある部屋を覗くと、確かに埃だらけの床に足跡があるのです。

ただ、その足跡は部屋の真ん中まで歩いて、そこで終わっているのです。

「た、確かにあるな。」

「そうっすよね。しかも変な感じに。」

泥棒。

私が最初に考えたのはその程度のことでしたが、でも明らかに泥棒とは言いにくいのです。

部屋の真ん中までしかない足跡。

物色した様子の無い部屋。

何よりも、その部屋以外に足跡は無いのです。

「だ、誰かいるんじゃ・・・。」

「誰っすかそれは。説明がつかないっすよ社長。」

「そうだが・・・。」

「社長、やめません?この依頼。」

「な、何を馬鹿な!?一度受けた依頼は必ずこなさなければ、信用を失うぞ!」

「でも、不気味じゃないっすか?この部屋。俺、やりたくないっすよ。」

B君の言うことに同意できてしまったのは事実です。

私も出来ればやりたくないと思いました。

部屋が、異様な雰囲気なんです。

あれは確実に何かいる。

そう、思えるのですが・・・。

「い、いや!仕事は仕事だ。割り切ってやるんだ。」

「マジっすか・・・。」

その日は切り上げて帰りましたが、次の日も、その次の日も不思議なことが起こったんです。


「社長!」

「何だ?」

「こ、これ!」

Aさんが見つけたのは階段の壁に付けられた手形でした。

しかも緑色の手形です。

「こんなの昨日はありませんでしたよ!?」

「そ、そうだったかな~?」

「そうです!」


「社長~。」

「今度は何だ!」

「あの、これって・・・。」

「うおっ!?」

B君は浴槽に沈む大量の髪の毛を見つけました。

「やべぇっすよ!マジで!」

「こ、これは・・・。」

言い訳も思いつかないほどに衝撃的でした。


あまりにも不可解な出来事が起こりすぎたため、私は依頼主に電話をすることにしたのです。

「あ、もしもし。私、遺品整理を承ったPというもので・・・。」

『お掛けになった電話は、現在使われていないか、電源が・・・。』

電話が、つながることはありませんでした。

「どうすんすか社長。マジでヤバいですよこの依頼。」

「私もそう思います。あまりにもおかしいですよあの家。」

「それは重々わかっているが、仕事だしな。」

「でも、連絡取れないんっすよね?」

「う、ま、まぁ。」

「連絡がつかないのに、代金もちゃんと支払われるんですか?」」

「うう。」

「止めときましょうよ社長。これ以上は本当にヤバいっすよ。」

「私も同感です。今回の依頼は断るということにして、後日改めて連絡を・・・。」

「い、いや!私はやるぞ!」

私は二人の忠告を聞かず、たった一人で続けることにしたんです。

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