第193話 柑奈さんの怖い話~寮の一階トイレ前編~
「よし!あたしの勝ちね!」
「くっ!」
ようやく決まったか。
てか式子さん、じゃんけん弱いなぁ。
五番勝負で全敗って・・・。
「それで柑奈軍曹はどのような話を?」
「そうね・・・。じゃあ定番のトイレの話しでもするわ。」
「おお!トイレの怖い話ですね。」
「ええ!それもちょっと不思議な話しよ!」
「ふ~ん。それは楽しみだな。」
お!式子さんにいつものスイッチが!
「期待しなさい式子!あんたの期待を超えるから!」
「ああ。」
なんだかんだ言って仲いいんだよなぁ。お二人。
「これはね、寮生活をしていた青年の話しよ・・・。」
スポーツ推薦で入った高校はとても広く、部活ごとに寮が用意されていた。
卓球部だった僕にさえ用意されていたのだ。
しかもかなり強制的で・・・。
「今日からここが君の寮だよA君。」
「あ~その先生?やっぱり寮生活は強制なんですか?」
「強制ではないがレギュラーにはなれないだろうね。うちの高校はそういう家と学校の通学の時間を練習に当てる生徒を育成してるからね。もちろん実力がしっかりとあればレギュラーに成れるけど・・・A君は、ね?」
まぐれで合格した。
中学の先生にも言われたっけな。
「だから、その、なんだ。高校でレギュラーになりたかったら寮生活を勧めるよ。」
「はぁ~・・・はい。」
親に反対されるという僕の危惧とは裏腹に親は即了承。
スポーツ推薦なんだからしっかりと実績を出せという父。
将来はオリンピックに連れてってねと言う母。
部屋が出来た!ラッキー!と喜ぶ妹。
誰も俺が寮になることを悲しんでくれなかった。
ある意味清々しい。
中学卒業後、僕はすぐに寮に入った。
荷物の整理も大体終わり、僕は卓球場を見に行った。
そこでは先輩だろうと思う人たちが練習に打ち込んでいた。
最初が肝心。そう思って近くにいた先輩に軽く挨拶し、部長さんを紹介してもらう。
「本日からこちらの卓球部でお世話になるAです!よろしくお願いします!」
「お!元気がいいな少年。俺は部長だ。わからないことがあったら副部長に聞いてくれ。俺は当てにならん!」
「ちょ!?お前部長でしょ!?少しは部長らしく・・・。」
「俺は!卓球以外!教えられん!」
「胸張るな!!」
明るい雰囲気だし、先輩たちは皆優しそうでホッとした。
「そういえばお前は実家からか?それとも寮からか?」
「はい!えっと、寮っす!」
「そうか・・・。」
素直に答えたのに部長さんは何だか、そうどこか嫌な表情をしたんだ。
「副部長。必ず教えておけよ。」
「うん。もちろんだよ部長。」
「あの、何を・・・。」
「A君、君には必ず覚えてもらうことがある。それは“一階の西側のトイレは絶対に使用するな”だ。」
この時の僕は意味が分かっていなかった。
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