第16話 尾口先生の怖い話~嘘じゃないのか?前編~

「それで今日はどんな話を聞かせてくれるんですか?」

「そうだな・・・今日は・・・。」

「僕に話させてくれないかな?」

声のする方に振り向くと、笑顔の尾口先生が立っている。

「尾口先生?」

「ほぉ。先生が話を聞かせてくれるんですか。」

「ああ。この前聞いた話でね、なかなかに怖いから君たちに聞いてもらおうと思ったんだよ。」

そう言うと、先生は椅子に座る。

「では聞かせてください。」

試すような式子さんの目が若干気になったが、尾口先生の話に集中することにする。

「これは、合コンの時に聞いた話なんだけどね・・・。」


Aさんは社会人になり、仕事も落ち着いてきたのでそろそろ恋人を作ろうと考えました。

しかし、Aさんの会社は下着メーカーなので出会いが余りありません。

困ったAさんは友達に頼み、合コンを開いてもらいました。

「Aです!まだまだバリバリ働ける27歳です!休日に一緒にゴロゴロしてくれる彼氏募集中です!よろしくお願いします!」

元気よくあいさつすると、男性陣から黄色い声援を貰える。

それが少しだけ嬉しくもありました。

「じゃあこれでみんな紹介終わったね~。じゃあ改めて・・・。」

「「「カンパーイ」」」

男女それぞれ三人ずつ、皆でおしゃべりをしながらお酒を飲み、刺身を食べて楽しく過ごしていました。

そんな時にBさんが言ったのです。

「なぁ、怖い話でもしないか?丁度夏だしよぉ。」

「いいね!面白そう!」

「なら、男女交互に話していかないか?」

「さんせーい!」

流れで怖い話をすることになってしまったAさんはとても困りました。

なぜならAさんは怖いものが苦手で、その手の話や映像などは極力避けていたからです。

「どうしよう・・・。」

そんな風につぶやいていると、男性の方から話が始まりました。

「これは俺の爺ちゃんが聞いた話なんだけどさ・・・。」

その場から離れたい気持ちと、自分が盛り下げてしまったら二度と呼ばれない怖さでAさんは動けませんでした。

「とりあえず、何か考えなきゃ・・・。」

初め、Aさんは怖い話をしない言い訳を考えていました。

でも、上手い言い訳がすぐには浮かばず、そうこうしてるうちに友人のCさんに肩を叩かれます。

「Aちゃん!出番だよ!」

「え!?ちょっと待って!?」

「ほらほら!ここに立って!」

言い訳が何も浮かばないままに立たされ、頭の中で軽いパニックを起こしてしまいました。

だからなのでしょうか、Aさんは嘘の話を話し始めました。

「これは、わ、私のお母さんから聞いた話なんだけど・・・。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る