第341話 百物語合宿~お題:日本人形 中編その1~
「さぁさぁ、始めましょうね。」
次の日、朝ご飯を食べてすぐに納屋の片づけを始めました。
納屋の中は、お世辞にも整理されておらず、僕個人としてはゴミ溜めのように見えてしまいました。
「おばちゃーん!これはどっち?」
「それは・・・そうねぇ。捨てましょう。」
祖母の分別は早く、基本的には小物類で気に入ったものだけを取って置く感じでした。
そのおかげか、作業効率はよく、お昼を回る頃には納屋の中の整理は半分以上終わっていました。
「は~い。お昼は頑張ったお兄ちゃんの大好物の唐揚げよ。たっくさん作ったからいっぱい食べてね。」
「あ、ありがと。おばちゃん。」
「うふふ。」
「え~私も頑張ったのに~。」
「大丈夫よ。しっかりAちゃんの頑張りもばあちゃんは見ていましたよ。だからAちゃんは特別に、納屋の中から好きな物を選んで貰って、それをあげるわ。」
「ほんと!?やったー!!」
「お兄ちゃんも欲しいのがあれば・・・。」
「僕はいいや。骨董品って、あんまり魅力を感じないからさ。」
「あらそう?じゃあご飯をいっぱい食べて、午後も頑張りましょうね。」
「「は~い。」」
これがきっかけであんな出来事が起きるとは、全く想像できませんでした。
「これで最後っと。ふぅ~。」
「はい。お疲れ様。」
「この要らないものってどうすんの?」
「明日業者さんに来てもらえるように、さっきお願いしたから業者さんにお任せするわ。何か欲しいものでもあったの?」
「いや。っていうか、貰っても持って帰れないでしょ。」
「そう?お兄ちゃんも小物なら持って帰れるわよ。」
「いいよ。女じゃあるまいし。」
「うふふ。」
「ねぇ!おばちゃん!私、これ貰ってもいい?」
「どれどれ?」
妹が選んだのはガラスケースに入った日本人形でした。
「これがいいの?」
「うん。何だか・・・これが気に入ったの!」
正直、この時は妹の趣味が悪いとしか思いませんでした。
けれど、今思えばこの時から妹はこの日本人形に憑かれてしまっていたのかもしれません。
その夜、最初の不可思議なことが起きました。
それは妹と借りていた一緒の部屋で起きました。
昨日と同じ時間に寝ようとした時、不意に視線を感じたのです。
「・・・お前か?」
日本人形が僕を見ている。
そんな気がした僕は妹に謝り、布を被せたのです。
けれど、深夜に起きてトイレに行こうとした時、またしても視線を感じたのです。
「まさか・・・やっぱりか。」
被せたはずの布が落ち、日本人形が見えていたのです。
きっと妹がやったのだろう。
そう思って布を被せなおし、トイレに行って戻ると、また視線を感じました。
「は?」
確かに被せたはずの布が、また落ちていたのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます