第342話 百物語合宿~お題:日本人形 中編その2~

「いやいや。え?」

妹は確かに寝ている。

風も、窓が閉まっているから吹くはずがない。

祖母も寝ているはずだから布がひとりでに落ちない限り、目の前の光景は無いはずなのです。

「・・・いや、考えすぎだ。」

もしかしたら日本人形が?そんなことを考えましたが、ありえない話だと僕は笑い、もう一度布を被せて寝ました。

それが正しいと肯定するように、朝起きた時には布は被ったままでした。


「それじゃあこれで終わりですね?」

「ええ。ご苦労様です。」

「いやそれにしても本当にいいんですか?この骨董品の数、売りに出せばかなり儲かるかもしれませんよ?」

「いいんですよ。そういう難しそうなことはしなくないんです。」

「あははは!そうですか。ではでは。」

業者に他の骨董品を渡すと、納屋の中はガラガラで、少しだけ寂し気な感じでした。

「業者さん、帰ったわ。」

「そう。」

「あら?Aちゃんは?一緒じゃないの?」

「さぁ?部屋にでもいるんじゃない。あいつ、意外と人見知りするから。」

「そうなの?」

「ねぇ、ばあちゃん。この納屋ってどうすんの?」

「そうねぇ・・・お野菜とかの保存に使おうかしら。何で?」

「いや別に。」

「・・・?お昼にしましょうか。」

「うん。あいつ呼んでくるよ。」

「ええ。」

妹を呼びに行くと、部屋の中から話し声が聞こえてきました。

「・・・だよ。・・・だね~。え?・・・・はは。・・・うんうん。・・・。」

電話してるのか?そう思いそっと扉を開けると、妹はあの日本人形に向かって話しかけていたのです。

「この年でお人形遊びかよ。おい。」

「うんうん。ね~。だからさ、私・・・。」

「おいったら!」

妹が無視するので、強引に肩を掴んで振り向かせた時でした。

日本人形がニタァって笑っているように見えたんです。

「お兄ちゃん?」

「え!?」

心配して覗く妹の顔。

僕は目を擦り、もう一度日本人形を見ると、昨日と変わらない微笑みでした。

「どうしたの?」

「いや・・・何でもない。」

それからです。

妹は日本人形とおしゃべりをするようになり、僕は僕で日本人形に監視されているような感覚に陥ったのは。

気のせいだと自分に言い聞かせていましたが、何度も視線が合うことに流石の僕もおかしいと思ったのです。

「ねぇ、ばあちゃん。あの日本人形について、何か知らない?」

「あらどうして?」

「なんかその・・・不気味っていうか・・・。」

「ん~そうねぇ。確かあの日本人形はじいちゃんが貰ってきた物なのよね。どこだったかしら・・・えっと・・・そうだわ!」

祖母の話しでは、あの日本人形は亡くなった祖父の妹さんの形見なんだそうです。

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