第343話 百物語合宿~お題:日本人形 後編~
「形見って・・・そんなのあげていいものなの?」
「う~ん・・・。大丈夫だとは思うんだけど・・・ねぇ、何かあったの?」
「いやその・・・。」
言うかどうか悩みました。
こんな言い方は失礼だなって思ってしまったからです。
けれど、僕も我慢の限界でした。
「・・・この一週間、あいつが、Aが日本人形を貰ってから変なんだ。」
「変?どういうこと?」
「あいつ、頻繁に日本人形とおしゃべりしてるんだ。それに、あの日本人形・・・僕のことを見ているような気もするし・・・。」
「・・・そう。」
祖母は少し考え、その日本人形を一晩自分の部屋に置かせてほしいと言ってきたのです。
妹は嫌がりましたが、半ば無理矢理に祖母に預けたのです。
「お兄ちゃん。」
寝ようと部屋に向かおうとした時、祖母に呼び止められました。
「今日一晩、ずっと起きててくれないかしら。」
「え?」
「Aちゃんの前では寝たふりをしてね。それで、あの子を見張っていて欲しいの。」
「それって・・・。」
「お願いね。」
祖母は話を切り上げると、部屋に入ってしまいました。
変だなとは思いましたが、祖母の言う通りにしました。
その夜、突然妹は起きだし、部屋の中をぐるぐる徘徊し始めたのです。
「お、おい?」
「・・・ない・・・ない・・・ない・・・ない・・・ない・・・ない・・・ない・・・ない・・・ない・・・ない・・・ない・・・ない・・・。」
虚ろな目で、ぶつぶつ何かを言いながら。
「Aちゃん。探しているのはこれかしら。」
そこに祖母が現れ、日本人形を見せたのです。
「私の!!!」
怒声をあげながら祖母から日本人形を、妹は奪ったのです。
「・・・でね・・・そう・・・うんうん・・・はは・・・ね~・・・。」
そしてまたおしゃべりを始めたのです。
「な、何だよこれ!?」
「そっか。うん。」
何かを納得した祖母は僕を連れて部屋を出ました。
その後、祖母から妹が憑依体質である可能性があるという話。
現在、妹が憑かれている可能性があるという話。
僕には理解できない話を祖母は語ってくれました。
「ばあちゃんも、昔はそうだった。だからもしかしたらAちゃんもってね。」
翌日、祖母はすぐに近くの住職さんを呼び、妹をお祓いしてもらい、日本人形は供養してもらいました。
妹は数日の記憶が無く、自分が何をしていたのかわかっていませんでした。
あの日本人形に憑いていた霊とは誰だったのでしょうか。
もしかして、祖父の妹さんだったのでしょうか。
何にせよ、今年妹が産む予定の子供が憑依体質でないことを祈ってやみません。
「どうよ!」
お~じわじわと押し寄せる恐怖。
実に心地いい。
そして柑奈さんのドヤ顔も清々しい。
「ふふっ。面白い話だったよ柑奈。これは私も本腰を入れよう。」
し、式子さんの本気!?
まさかまさか・・・だよね?
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