第53話 柑奈さんの怖い話~ボニーちゃん前編~

「今日はあたしが話を聞かせるわ!」

部室の椅子に座るなり、柑奈さんは宣言する。

「ほぉ。今日は柑奈の話か。」

「ふっふっふ。あたしの怖い話に泣きなさい式子。」

「望むところだ。私を泣かせてみろ柑奈。」

なんだかんだ仲良しだよなこの二人。

「話す前に二人に確認するわ。二人は“ボニーちゃん”を知っているかしら?」

「ぼにーちゃん?いえ、僕は知りません。」

「ふ~む。私も聞いた覚えはないな。」

「よーし!」

僕たちが知らないことを柑奈さんは笑顔で喜ぶ。

「じゃあ心置きなく話せるわ!良ーく聞きなさい!」

「じゃあそうさせてもらおうか優君。」

「はい!」

知らない怖い話を聞く前はどうしてもワクワクしてしまう。

「これはね、田舎で噂になった話なんだけどね・・・。」


小学生のAちゃんは親の都合で祖母の家がある田舎に引っ越してきました。

「よく来たね~Aちゃん。」

「お邪魔しますお婆ちゃん。これからよろしくお願いします。」

「はっはっは。Aちゃんは昔のお前と違ってしっかりしてるな~。」

「うるさいよ親父。・・・迷惑かけるな。」

「気にするな。この辺ですぐに家なんて見つかることはないんだ。それにな、あいつはAちゃんと過ごせるのが嬉しいんだよ。」

お婆ちゃんに案内されて自分の部屋に行くAちゃんの姿を父親は優しい目で見守りました。

Aちゃんの父親はお巡りさんで、田舎の交番に移動になったのです。

ところが、住むアパートもマンションもありませんでした。

だから父親の実家に住まわされてもらうことになったのです。

「Aちゃん、婆ちゃんと一緒にお夕飯作ろうか?」

「はい!」

Aちゃんの普段通りの様子に父親はホッとしていました。

春休みの終わりにはAちゃんの母親も合流し、話題は明日からのAちゃんの学校の話になりました。

「Aちゃん、明日から行く学校はちょっとばかり変わった学校だけど、頑張るんだよ。」

「何が変わってるのお爺ちゃん?」

「田舎だからな、子供が少なくてなぁ。小学校は全学年が一緒のクラスなんだよ。だから授業もほとんどが自習なんだよ。」

「へ~そうなんだ~。」

「うふふ。Aちゃんなら心配ないわよ~。しっかりしてるもの~。」

「それもそうだな。はっはっは。」

明日からの学校を楽しみにしていたAちゃんがチラッと父親を見ると、どこか難しそうな、よくわからない表情をしていました。

次の日、Aちゃんは小学校に転校し、すぐに友達が出来ました。

「Aちゃん!一緒に帰ろう!」

「うん!いいよ。」

仲良くなったBちゃんと手をつないで帰っていると、後ろを歩く男の子の話が聞こえてきました。

「なぁ、今日もボニーちゃんはいなかったな。」

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