第87話 高宮君の怖い話~かるさん。前編~
今日は朝から雨。
窓から見る外の景色は土砂降りで正直げんなりするが、僕は雨を嫌いになれない。
何故なら本を気兼ねなく読めるからだ。
これが晴れだった場合、外に出ないと勿体ないような気持ちになってしまう。
けれど、湿気という本にとっての天敵が発生することもあり、僕は雨を好きにもなれない。
結局のところ、どっちつかずなのである。
「ねぇ~千夏。」
「何でありマスか柑奈軍曹。」
「何か面白い話ない?正直雨って何もする気が起きないのよ。」
「ん~何かネットで調べてみるでありマス。」
キーボードの心地よいタッチ音を聞いていたい気もするが、ここは僕の出番だろう。
「あの、僕が話してもいいですか?」
「優?何かあるの?」
「いい怖い話がありますよ。」
「おお!是非聞かせて欲しいでありマス高宮兵。」
久々に話せる~!
「いったいどんな話よ?」
「お二人は『かるさん』って知ってますか?」
「かるさん?知らないわね。」
「自分もでありマス。」
「じゃあちょうどいいですね。では聞いてください・・・。」
私には双子の姉がいます。
近所では評判の仲良し姉妹です。
これは私達姉妹が10歳ぐらいの頃のに起こった出来事です。
冬休み、私たちは家族揃って父の実家へ泊まりに行きました。
父の実家へ行くのは本当に久しぶりで、年の近い親戚や祖父母に会える事がとても楽しみで、前日の夜も眠れませんでした。
父の実家はかなりの田舎にあって、実家の周りはぽつんぽつんと民家がある位で昼間でもあまり人通りはありません。
それでも私たち子供にとっては普段行かない場所というのは冒険心に満ち溢れており、着いてすぐに挨拶もせずに姉と一緒に遊びに出て行きました。
「どこ行こっか?」
「ん~お姉ちゃんはどこか行きたい場所は無いの?」
「そうだな~。じゃあ川に行かない?お魚が見たいなぁ。」
「いいね!私もお魚さん見たい!」
「じゃあ決定!行こう!」
「うん!」
姉と共に田舎道を眺めながらあることないこと話しながら進むと、向こうから誰か来たのです。
田んぼに挟まれた1本道なので私は横に避けようとしました。
「お姉ちゃん?」
けれど、姉は動かなかったのです。
不思議に思っていると、向こうからやってくる人がだんだんと近づいてきます。
近づくにつれ、あることが分かりました。
それは、向こうから歩いてくる人が足を引きずった女の子だということです。
「あの子どうしたのかな?ねぇお姉ちゃん。」
「・・・。」
「お姉ちゃん?」
道幅がとても狭いので、横に避けにないとこのままでは女の子とぶつかってしまいます。
だから私は一生懸命に姉を動かそうとしたのですが、全然動きません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます