第88話 高宮君の怖い話~かるさん。中編その1~
「お姉ちゃんってば!」
私がもう一度力一杯押そうとした時、不意に姉が私の手を掴みました。
そして力強く私の手を引っ張り、来た道を戻り始めたのです。
「痛い!痛いよお姉ちゃん!」
「・・・。」
「ねぇ!痛いよ!」
「・・・。」
「どうしたのお姉ちゃん!なんか変だよ!」
「いいから、急いで帰るよ!」
姉は怒鳴るように私にそう言うと、その後は何も言いませんでした。
姉が怖かった私は泣きながら父の実家に帰りました。
玄関に着くと祖母が迎えに出てくれましたが、様子変です。
どうしたのかなと祖母が見ているものを見ると、そこには顔面蒼白な姉が震えていました。
そんな姉を見て、祖母はとても驚き、何があったのかを私に聞いてきました。
「いったいお姉ちゃんはどうしたんだい!?」
「わ、わかんない。」
「分かんないって・・・A子ちゃんは一緒じゃなかったんかい?」
「ううん。ずっと一緒にいたよ。けど、わかんないの。」
状況がわからず、どうしていいかわからない祖母が姉を抱きしめると、姉はこう言ったのです。
「そこの1本道でB子ちゃんを見た!だ、だけど!B子ちゃんじゃなかった!」
そう叫んだ姉は急に大泣きし、祖母に連れて行かれました。
B子ちゃんというのは親戚の子で私達姉妹より3歳年上の女の子です。
以前は田舎に来た時はよく遊んでもらっていたのですが、最近では会ってすらいません。
姉が落ち着きを取り戻した後に聞いたのですが、あの時見たB子ちゃんらしき人は腰まで伸びた髪はぐちゃぐちゃで、服も泥で汚れており、B子ちゃんの面影は全くありませんでした。
ここまでなら私も同じように見えていたのですが、その後に姉は私の見えなかったことを言ったのです。
「よぉく思い出して話してごらん。」
「・・・あのね。足を引きずっていた女の子はB子ちゃんに似てたけど違うの。あれは化け物だった。でも、でもね!本物のB子ちゃんもいて、化け物の引きずっている方の足を掴んでいたの!」
姉の話しを聞いた祖母は恐怖で震えそうな体を我慢してこう言ったのです。
「『かるさん』が出たんか。」と。
祖母はすぐさま私たちを部屋に残し、別の部屋に急いで入ってしまいました。
気になった私は両親や祖母に何が起こっているのか何度も聞こうとしましたが、「お前は何も心配するな。」と言われるだけでした。
そんな私を姉が無理やり寝かしつけたのを覚えています。
そして次の日、私たちは家に帰ることになったのです。
まだ数泊する予定だったのに。
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