第442話 高橋君の聞いた怖い話~サッカー部の寮 中編その2~
それから僕は林が気になり、昼間矢板君たちと見に行きました。
けれどその林は狭く、中を歩いても女の人がいるようには思えません。
「ま、いる訳ねぇわな。いたら幽霊なんて話になんねぇし。」
「やっぱ夜見るしかねぇんだな。」
「う、うん。」
その夜、僕らは林が見える矢板君の部屋に集まり、窓から林を見ていました。
けれど、女の人は出てくる気配は無く、ただ時間だけが過ぎていきました。
「やっぱそう簡単には見れない感じだな。」
「ま、最初っから簡単な話だなんて思ってねぇよ。」
また明日という話になった時です。僕の耳にヒタッという音が聞こえてきたのです。
その音に反応して林を見ると、林の中に真っ赤なドレスを着た片腕の無い女が立っていたのです。
「・・・いた。」
僕の言葉に応えるように矢板君たちも外を見てくれました。
そして同じように女の人が見えていると、思っていました。
「マジかよ・・・あ、あれが例の女?」
「そう、らしいな。だが女とは限んねぇな。頭が無いし。」
「・・・は?」
矢板君が言った言葉に、僕と丸山君は目を丸くしました。
だって無いのは片腕だったからです。
「は?何言ってんだよ?
そして僕が見えているのと、丸山君が見えているのも違ったのです。
「何言ってんだよ!無ぇのは頭だろがッ!!」
「
「・・・僕には、片腕が無いように見えるよ。」
「はぁッッ!!?」
「ちょっと待て。あいつ、こっちに来てやがる。」
女はヒタ、ヒタっと歩いているのに、かなりの速さでこちらに向かってきているのです。
「チッ!!」
矢板君は窓を急いで閉め、丸山君は扉の鍵を急いで閉めていました。
その間、僕は女を見ていました。
女の揺れる髪の隙間からは血で汚れたような口が見え、ニタァっと笑っているように見えました。
「笑ってる・・・。」
「見るなッッ!!」
矢板君に引っ張られ、僕は床に倒れました。そして、意識を失ったのです。
次の日、目を覚ますと自分の部屋にいました。
後で聞いた話ですが、矢板君の部屋で倒れていた僕らを部長たちが見つけてくれたようです。
「あいつはいったい何なんだ?」
「さぁな。けど、良い幽霊じゃねぇのは確かだな。」
「不思議なのはみんなに見えてる姿が違うことだよね。」
「なぁ、本当に片足じゃねぇんだよな?」
「何度も言うんじゃねぇよ。俺は頭、小森は片腕だった。他の奴にも聞いたけど、同じ奴もいれば違う奴もいた。何なんだ本当に。」
その日から、僕らも窓の外を見ると女を見るようになり、次第に気にならなくなっていきました。
けど、僕は結局退寮することになったのです。
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