第81話 柑奈さんの怖い話~彼女。前編~
「・・・ねぇ式子。」
「何だ柑奈。」
放課後のゆったりとした時間。
オカルト研究会の部室には式子と柑奈の二人だけ。
互いに本を読んで過ごしていたが、流石にそれだけでは飽きてしまう。
だから柑奈から声を掛けたのである。
「何で誰も来ないのよ?」
「さぁ?」
「さぁ?って、優から何か聞いてないの?千夏はたぶんパソコン部でしょ?」
「だろうな。星夜は何かの用事だろう。優君は・・・そういえば聞いてないな。」
「連絡なし?珍しいこともあるわね。」
「そうだな。」
続く言葉が見つからず、柑奈は無言になる。
式子も柑奈からの反応がないため、素直に口を閉ざす。
「・・・なんか怖い話でもする?」
「ほぉ。何かあるのか柑奈?」
「そうねぇ・・・。じゃあこれは知ってる?ある社会人の話しなんだけど・・・。」
ようやく休みが取れた。
あれは夏も過ぎて少しばかり涼しくなってきた10月の頃だったと思う。
僕の会社は夏に大きな取引があって、皆が皆夏休みを9月に取っていました。
けれど下っ端の僕はなかなか取れず、上司に怒られて10月に二日間の夏休みを取ったんだ。
正直、前日の段階で仕事が終わらなかったのに休みのは嫌だったけど、休みは休み。
何かしらやろうかなって考えて。
考えて、考えた結果、紅葉を見に行こうって言うありきたりな形になったんだ。
そんで、仕事の帰りに車をレンタルして、次の日には無計画の気楽な旅に出たんだ。
「ふぅ~・・・よし!。行くか!」
久々の運転に緊張しながらも山、というよりも田舎の方を目指して車を発進させたんだ。
だけど・・・。
「ん~?やっぱあそこはひだりだったか。まぁいいか。」
一時間もしないうちにどこ行けばいいか迷ってしまって。
結局、コンビニで地図とにらめっこ。
30分の睨み合いの末に、僕は山へ行くことにした。
「ようやく順調だなぁ。」
だんだんと街並みが変わり、目の前に目指す山が見えてきた。
ここからでも紅く色づいているのがわかる。
「・・・綺麗だなぁ。」
言葉が自然と出てくるほどに、僕は感動していたんだ。
その感動を胸に、僕はまた近くのコンビニによっておにぎりを少々買ってから山を目指したんだ。
丁度お昼ごろだったと思う。
山に着いた僕は登山口で受付をしてから山を登って、景色のいい場所を探したんだ。
なかなか見つかんなくって、妥協しようと思った時、一人の女性と出会った。
印象的だった。
こんなにも綺麗な紅葉を見て、彼女は無言で泣いていたから。
それも、寂しそうに。
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