第360話 百物語合宿~お題:不思議 中編~

「ここにいればいいよね。」

トイレ近くの御神木前で立って動かない私。

目の前では賑やかに盛り上がる祭り。

何だか、私だけ別の世界から覗いている。

そんな気持ちになりました。

「おや?」

ぼーっと、祭りを見ている時でした。

「君、もしかして迷子?」

何かのヒーローのお面をした、中学生ぐらいの男の子に声を掛けられたのです。

「うん。」

「だよね。でも・・・う~ん・・・。ま、いっか。ねぇねぇ、ここで何してるの?」

「Aちゃんを待ってるの。」

「Aちゃん?あ~あの子のことかな?」

「Aちゃんを知ってるの?」

「もちろん。君のことも知ってるよYちゃん。」

驚きました。

男の子に会った記憶は無く、また不信感を覚えもしなかったのです。

「Yちゃんは初めてだよね、ここのお祭り。」

「うん。何で知ってるの?」

「え?フヒヒ。僕は何でも知ってるんだよ。でもそうだね・・・もしYちゃんが知りたいなら君の知りたいこと何でも答えてあげるよ。」

「何でも?」

「そう、何でも。ただし、条件があるけどね。」

「条件?」

「僕主催のお祭りに遊びに来てくれること。いいかな?」

「そんなことでいいのならいいよ。」

「じゃあ行こうか。」

男の子について行くと、神社の奥に下へ降りる階段があって、私は何の疑問を抱くこともなく男の子の後をついて行ったんです。

神社の奥に階段なんて無いのに。

「ついたよ。」

「うわ~!」

そこは盆踊り会場のような場所でした。

真ん中に大きなやぐらが立ち、太鼓の音が響く。

やぐらを囲むようにお面を付けたものたちが踊り狂い。

周りには見たことの無いものが売っている屋台で埋め尽くされていました。

お気づきの方もいるかもしれませんが、見てハッキリとわかりました。

彼らは人ではないものたちだったんです。

「フヒヒ。どう?僕のお祭り。」

「すごいね!あれは何?」

「あれは蝙蝠の姿焼き。筋張っていて、歯ごたえがいいよ。」

「あれは?」

「あ~。あれはイモリの唐揚げ。僕の大好物。」

「へ~。なんか不思議なものでいっぱいだね。」

「でしょ。普通のお祭りでは味わえないよ。でも、Yちゃんには・・・これかな。」

お金を払わず、屋台から緑色の飲み物を渡してきました。

「これは何?」

「これは“お願いそうを使ったお茶”だよ。」

「お願い草?何それ?」

「フヒヒ。これを飲みながら願い事を頭の中に思い浮かべれば、願い事は叶うんだよ。」

「本当?」

「僕は嘘はつかないよ。見てて。」

男の子とは何かを願いながらそのお茶を飲むと・・・。


ドーーーンッッ!!


空高くに花火が打ちあがったのです。

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