第359話 百物語合宿~お題:不思議 前編~
「気を取り直して、今日は優君からだ。」
「さっさと始めるわよ。」
尾口先生は気になるけど・・・ま、問題は無いんだろう。
「じゃあいきます。・・・っとこれで。えっと・・・お題は“不思議”ですね。えっとこれは・・・。」
「あ!自分のでありマスね。これは不思議な体験ならOKでありマス。」
「なるほど・・・では、こんな話はいかがでしょうか。」
これは私が小学校の頃に体験した話です。
私の両親の実家は寒い地方にあり、夏の時期はとても快適に過ごせるのでいつもお婆ちゃんの家で遊んでいました。
あの年もその予定だったのですが、父親の仕事の都合で私だけが先にお婆ちゃんの家に遊びに行っていたんです。
「おばーちゃん!」
「おやおやYちゃん。よく来たね~。おや?もしかして・・・。」
「うん!私、一人で来れたよ!」
「あらまあ!お利口さんね。パパやママは後から来るのかい?」
「うん明日!」
「そうかいそうかい。」
「あ!Yちゃん!」
「Aちゃん!」
夏の時期に遊びに来るのは私の家族だけでなく、親戚はほとんど遊びに来ていました。
あの年は、Aちゃんだけだったんですけど。
「久しぶりだね。お正月以来?」
「うん。」
「もう四年生だよね。早いなぁ。」
Aちゃんは中学二年生で、私にとってはお姉ちゃんのような人でした。
「Aちゃん、Yちゃんと遊んであげてね。」
「もちろんだよお婆ちゃん。ほら、Yちゃん行こ。」
「うん!」
私たちは川や森、原っぱなどの自然の中で遊んでいました。
花冠の作り方を教わったのはいい思い出です。
「ねぇ、Yちゃん。」
「何?」
「今晩、近くの神社でお祭りがあるの。一緒に行かない?」
「行く行く!」
「じゃあ浴衣着ようね。」
「うん!」
その年は丁度お祭りの時期と被り、私はAちゃんと一緒に浴衣を着て、お祭りに行ったんです。
初めて切る浴衣に私ははしゃいでいたのを覚えています。
お祭りはとても賑やかで、当時の私はこの村の何処にこんなに人が!?って驚いていました。
「はぐれないように手をつなごうね。」
「うん!」
お婆ちゃんから貰ったお小遣いで、Aちゃんと一緒に綿あめやかき氷を買って食べ、金魚すくいは全然できなくて泣きそうになって。
本当に楽しい思い出です。
でも、そこで事件は起こりました。
「・・・あれ?Aちゃん?」
トイレから出てきた私は、Aちゃんを見失ってしまったんです。
けれど、泣き喚くことなく私は冷静にその場から動かないという行動にとれたんです。
今思えば、少し変なんです。
当時の私は誰よりも泣き虫で、いつもだったらあの状況で泣くと思うんです。
けど、何故かとても冷静だったんです。
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