第248話 式子さんの怖い話~そのカルテは・・・。中編その2~
「う~ん・・・。それにしても珍しいな。風邪以外に病気の経験が無いのに、風邪だけは異常にひいている。頻度的にだいたい二カ月に一回は罹っているぞ?」
不可思議なカルテでした。
その人物のことも知らなければ、風邪にばかり罹っている。
けれど、不思議なのはそれだけでなく・・・。
「・・・ん?あ、あれ?おかしいぞ?つい最近もうちに来てるじゃないか!?こんな人に会ったことないぞ!?患者はみんな私が見ているし・・・おかしくないか!?」
そう、この男性は先週にもうちの病院の診察を受け、風邪と診断されていたのだ。
もちろん、私はこの男性を知らない。
風邪ということだけをみても、最近は子供しか罹っていない。
明らかに40代の男性を診察などしていないのだ。
けれどカルテはしっかりと書かれている。
おまけに文字を見ると、自分の字のようにも見える。
「おかしいだろ・・・。私はこんな人知らないぞ?Aさんなら知っているのか?」
そう思った私はそのカルテを自分の診察室に移動させ、月曜日にAさんに聞くことにしたのです。
私が知らなくてもAさんなら知っている。
そんな淡い可能性を信じて。
だが結果は望まない形だった。
「Sさん?う~ん知りませんね~。」
「Aさんもかい?けどカルテが・・・。」
「そのカルテを拝見しても?」
「ああ。確かここに・・・あれ?」
「先生?」
「あ、あれ?ここに入れておいたのに・・・あれ?無いぞ!?」
確かに私は机の引き出しに入れておきました。
それなのにSさんのカルテだけ無いのです。
引き出しをひっくり返してもあのカルテは無かったのです。
「あれぇ!?」
「先生の見間違い、という可能性はないですか?」
「い、いや確かに私は見たんだ。そしてここの引き出しに・・・何で無いんだ!?」
「確かにここにいれたのですね?」
「間違いない!ここにいれて、後でAさんに聞こうと・・・。」
「う~ん。ですが、引き出しを先生以外が勝手に開けるということは無いと思うんですけど・・・一応、若い子たちにも聞いてみますね。」
Aさんが他の看護婦に聞いてくれたが、答えは誰も触っていないだった。
ならばあのカルテは?
確かに私はあのカルテを見たのです。
その証拠にSさんの名前を覚えています。
風邪ばかり罹っているということも、そして先週にも訪れたことを。
「本当に知らないのかい?先週もうちの病院に来てるみたいなんだ。」
「先生には申し訳ないけど、私は知りませんね。Sさんってここら辺で聞いたことない苗字ですし・・・。」
「そうなんだよなぁ。私も聞いたことないんだ。同じ年代だから学校で名前ぐらい聞いてもいいはずなのに。」
「先生、倉庫の方を見に行きませんか?もしかしたら先生は持ってきてるつもりでかたずけてしまった可能性もありますから。」
「ああ。わかった。」
私は終業後にAさんと倉庫を見に行くことにしたのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます