第14話 高宮君の怖い話~赤い隣人後編~

待ちに待った夏休みをA君はアルバイトで過ごし、お金を溜めていました。

でも、毎日のようにアルバイトがあるわけではありません。

その日も、暑い日でした。

「あちぃ・・・。」

引っ越しをして失敗したことはエアコンの設置をし忘れたことでした。

「あ~アイスでも食うか。」

だらだらと動き、冷蔵庫を開けましたが、アイスはありません。

「はぁ~買いに行くか。」

適当なTシャツに着替え、財布と携帯を持った瞬間、なぜかあの話を思いだしたのです。

「まさかな。」

ないないと首を振って部屋を出ると、202号室の前にいたのです。

真っ赤なコートを着た男が。

A君は内心でゾクッとし、速足でその場を去りました。

「マジかよ・・・。」

自分が見たものが信じられず、立ち止まって振り返ると、やはり男は立っているのです。

A君は逃げるようにコンビニに行きました。

「どうすんだよ・・・。」

話しの通りならアパートに戻った後、悲鳴が聞こえるはず。

このまま聞いた話の通りに進んでいいのか?と、A君は悩み、友人に電話しました。

「マジかよ!?うっそだろ!?」

「マジだって!お前の話通りの展開かもしんねぇんだよ。」

「ちょっと待ってろよA!すぐに行くかんよ!」

テンションの上がった友人が十分もせずにコンビニに来ました。

「よっしゃ!行ってみようぜ!」

「はぁ!?何で!?」

「面白いからに決まってるだろ?行くぞ!」

友人の勢いに押され、A君は嫌々ながらもアパートに戻りました。

すると、202号室の前で真っ赤なコートを着た男とBさんが口論をしていたのです。

「んだよ~違うじゃんか~。」

「よかった・・・。」

話と違うことにホッとしていると、Bさんと男は202号室に入って行ったのです。

「あれ?」

「どうしたんだよ?」

「あの部屋って・・・。」

「んなこといいからお前の部屋で遊ぼうぜ。」

A君は気にはなりましたが、友人の言う通りに自分の部屋に戻りました。

すると、「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」というBさんの悲鳴が聞こえたのです。

「え!?」

慌てたA君と友人は202号室の扉に向かいました。

「Bさん!」

何故か鍵が開いていたので、部屋の中に入ると、真っ赤な包丁が転がっていました。


「その後、A君は警察に連絡しましたが、今でも真っ赤なコートを着た男とBさんは見つかっていません。おしまいです。」

「う、うん。こ、怖い話だったね。」

青ざめた尾口先生が懸命に笑顔を作りながら感想を言ってくれる。

「あの、先生?」

「い、いや~実は僕もアパートに住んでいて、その、201号室なんだよね。」

「あ。」

「ははは・・・ははは・・・。」

乾いた笑いを発しながら尾口先生は泣きそうな顔で部室から出て行く。

「聞かなきゃ・・・良かったなぁ・・・。」

という言葉を残して。

僕はいたたまれない気持ちになって、誰もいない部室で、無言で頭を下げた。

「君は一体何をしているんだい?それに何で尾口先生は泣いていたんだい?」

そこに状況を全く知らない式子さんが戻って来たのでした。

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