第135話 神楽坂さんの怖い話~浮かぶ何か前編~

「そう言えば式子、今回も俺は怖い話を持ってきたんだが、聞いてくれるかい?」

「ほぉ。」

2連敗中の神楽坂さんの怖い話、どんなのだろうか。

「その話は自信があるのだろうね星夜。」

「もちろんさ。何せ僕の実体験だからね。」

「え!?神楽坂さんの!?」

「ああ。本当は話す気はなかったんだが、子犬ちゃんが話してくれたしね。僕も自分の体験したことを話そうと思うよ。」

自信満々の顔からもわかるように、なかなかに怖い話なのかもしれないな。

「聞いてくれるかい?」

「いいだろう。話してくれ。」

「まさか優に続いてあんたも実体験を話すなんてね。」

「まさに実体験限定の怖い話大会でありマスな!」

はたしてどんな話なんだろうか。

「あれは、そう俺が中学生の頃だった・・・。」


俺の家は住宅街にあってね。

夜は街灯がしっかりと整備されているから暗くなるようなことはほとんどなかったんだ。

けれど俺は塾に通ったり、部活に真面目じゃなかったから夕方には家に帰り、ひたすらテレビばかり見ていたんだよ。

今みたいに怖い話とかが好きということも無く、有限である時間を無意味に過ごしていたんだ。

そんな俺を癒してくれたのが、ジョンだった。

ジョンは大型犬でね、室内で飼っていたんだ。

とてもおとなしい奴でね。人が来ても吠えることなんてあんまりなかったんだよ。

だが、その日は違ったんだ。

ワン、ワン、ワン!

ジョンは急に吠え始めたんだ。

「ジョン?」

普段が普段だからとても気になってね。

「ジョン、どうしたんだい?」

ワン、ワン、ワン!

「どうしたの?」

「わからない。なんか急に吠えだして。」

「困ったわね。近所迷惑にもなるし、星夜散歩に連れていってくれない?」

「分かったよ母さん。」

近所迷惑のことを考えて普段は行かない時間に散歩に行ったんだ。

「ジョン、何があったんだい?」

ジョンが答えることは無かったけど、家を出てからは吠えなくなっていたね。

だからきっと散歩に行きたかったんだって、あの時は思ったんだ。

しばらく歩いていると、またジョンが吠えだしたんだ。

ワン、ワン、ワン!

「ジョン?」

ジョンが吠えている方向を見ると、そこは地元でも有名な廃墟でね。

正直あまり近寄りたくない場所なんだ。

噂が本当ならそこに住んでいた家族が無理心中したとか。

堅気じゃない職業の方たちの住処だったが抗争で今のような廃墟になったとか。

放火魔に火を付けられて一家が燃やされてしまったとか。

この近辺では無数とも言える噂が立っていた。

だから俺はその場から一刻も早く立ち去りたかった。

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