第134話 高宮君の怖い話~飼育小屋のウサギ後編~

「す、す、優!?に、逃げるんだ!?」

「と、父さん!?」

「と、父さんはダメだ。こ、腰が抜けてしまって。」

「ぼ、僕もあ、足が・・・。」

僕たちの声に反応した兎は男性を食べるのを止め、僕たちの方に向かって来たんです。

ぴょん、ぴょん、ぴょん。と。

「優!?」

兎は倒れている父さんを無視して僕に向かって来たんです。

「ひうっ!?」

ゆっくりと来る恐怖から目を背けたいのに、目は言うことを聞かず、近づいてくる兎を見ていたんです。

「逃げろ!!優!!」

僕も死んじゃうんだって思った時です。

「・・・へ?」

いつの間にか兎の目が人間の目から青色の目に変わっていたんです。

「き、君は。」

「・・・。」

怯えている僕の目を見て、その兎は悲しそうな顔になってどこかに行ってしまったんです。

兎がいなくなるころには気を失っていました。

次の日に目を覚ますと、父さんも同じ夢を見たと言ったのです。

「あれは夢だったんだよ。」

「そ、そうかな?」

「ああ。父さんも信じられなかったが母さんが言うには父さんと優はお風呂を出てすぐに寝てしまったそうなんだ。おまけにニュースにも男性のことは書いていないんだよ。」

父さんの言う通り、あれは夢だったのかはわかりません。

けれど確かに男性の死体はありませんでした。

ただ、もう一つ無くなったものがあります。

「どこいったんだよぉ・・・。」

青色の目の兎がいなくなって、タケちゃんは悲しそうでした。


「それ以来、何だか兎が怖くてですね。」

「なるほど。」

「そんなことがあったんでありマスね。」

「俺もその事件のことは覚えているよ。酷い事件だったが、突然終焉が訪れ、幼い俺は犯人が捕まったんだって思っていたよ。」

「その食べられていた男性が犯人だったってこと?けどじゃあその男性の死体はどこにいったのかしら?」

「それは僕もわかりません。あれが本当に現実だったともハッキリと言えなくて。だけど、あの目だけは忘れられないんです。」

思い出すだけで体が震えそうだ。

「人間の目をした兎で、ありマスか。」

「はい。」

「なら優君の前で兎の話をするのは控えよう。」

「え?べ、別にいいですよ!そんな気を遣わなくても・・・。」

「そうではないさ。私たちはオカルト研究会、ならばこの部室では怖い話をしようじゃないかってことさ。」

式子さん・・・。

「そうね!てかあたし猫派だし。」

それはあまり関係ないような・・・けど、柑奈さんらしい優しさかな?

「僕も子犬ちゃんに嫌われたくないからそうしよう。」

神楽坂さんまで・・・ありがとうございます。

「ぐふふ。高宮兵に新たな怖い話を披露しますよ!」

麒麟園さんもありがとうございます。

皆優しくて、僕はオカルト研究会でよかったなぁ。

あれ、涙が・・・。

「けれど惜しいでありマスな~。怯えている高宮兵は可愛かったでありマス。」

「それについては同感だな。」

「ほんとよね~。」

「怯えていない子犬ちゃんも可愛いよ。」

前言撤回だクソッたれ!

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