第136話 神楽坂さんの怖い話~浮かぶ何か中編~

「ジョン行こう!」

ワン、ワン、ワン!

俺の言葉が届かないのか、ジョンは吠えるのを止めなかったんだ。

「ジョン!」

ワン、ワン、ワン!

「ダメだ。仕方ない・・・。」

あまりしたくは無かったけど、リードを無理矢理引っ張って俺はあの場から去ったんだ。

すると不思議なことにジョンはピタリと吠えるのを止めて散歩を再開したんだ。

「ジョン?」

何事もないと言うようにね。

けど、次の日も同じような時間にジョンは吠えだしたんだ。

ワン、ワン、ワン!

「ジョン・・・。」

「今日もなの?」

「ああ。そうみたいだね。」

「いったいどうしたのかしら?」

「わかんない。」

「病気とかじゃないといいんだけど。一応、明日は休みだし診てもらいましょう。とりあえずは今日も散歩に行ってきなさい。」

「うん・・・。」

余り気乗りはしなかったけど、俺はジョンを散歩に連れ出したんだ。

そして案の定、ジョンは吠えるのを止め、そしてまたあの廃墟の前で吠えだし始めたんだ。

ワン、ワン、ワン!

「ジョン、いったいここに何があるんだい?」

ワン、ワン、ワン!

答えてくれるわけはない。

けど、きっとジョンはここに何かがあるって言いたいんだと思ったんだ。

でも怖くてね。

その日も僕はジョンを無理矢理引っ張って帰ったんだ。


「う~ん・・・何の異常も見られませんね。」

「そうなんですか?」

「はい。いたって健康体ですよ。けどそうですね。見落としがあるかもしれませんので一応血液検査もしておきましょう。」

「よろしくお願いします。」

ジョンは病気じゃなかった。

血液検査の結果も何も悪くない。

だから、やっぱりあの廃墟なんだって。

僕の中で確かな確証を得たんだ。

そしてその日もお昼に、僕はあの廃墟に一人で入ったんだ。

「夕方とは違う雰囲気だな。」

中は荒れていたけど、何かがあるようなことは無かった。

結局一時間中を探索したけど、何もなかった。

「ジョンはどうして吠えたんだろう?」

そんなことを考えていると、後ろからガサッていう物音が聞こえたんだ。

「ッ!?」

振り返ると、そこには俗に言う不良という輩がいてね。

「ここで何してやがる?」

「え?あ、その・・・。」

「あ゛ぁ?」

「いえ、あの俺の犬が・・・。」

「犬だぁ?逃げちまったのか?」

「ちが!?その・・・ここを通るたびに犬が吠えるので、その、何かあるのかなって・・・思いまして・・・。」

「犬が吠えるだと?何時ごろだ?」

その不良は何かを知っているのか、少しだけ怯えた感じだったね

「その、夕方です。」

「・・・そうか。」

「あの、何か知ってるんですか?」

「・・・ココには近寄らねぇって誓うなら話してやるよ。」

俺が素直に頷くと不良は話してくれたんだ。

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