第189話 式子さんの怖い話~ついてくる靴中編その2~
「んじゃ姉ちゃん、明日は必ず親父の墓参りな。」
「わかってるわよ。」
「お姉さん、明日もお話をしてもいいですか?」
「いいわよ~。なんだったら弟を捨てて私に嫁ぎなさい。幸せにしてやるわよ。」
「おい!弟の嫁を弟の前で口説くな!」
本当に笑った。久方ぶりに。
だから聞き忘れた。
「あんたの部屋はそのままだから!そこで寝なさい!」
「は~い。」
懐かしの自分の部屋。
3年前まで使っていたのに、入るのに緊張する。
「すーはー。すーはー。よし!」
変な勇気をもって扉の中に入ると、変わらない私の部屋!・・・ではなかった。
「・・・え?」
九割方私の使っていた部屋である。
ある程度の荷物がないのは私が持っていったから説明がつく。
けれど・・・。
「何でここに革靴が?」
私の部屋の丁度入口に革靴が置かれていたのです。
それも男物。私の物ではないことは確実です。
「もしかして弟か?あいつ、明日説教だな。」
驚きはしましたが、考えてみれば物置にされていてもおかしくはないのです。
だからその革靴を弟の部屋に置き、私は眠りにつきました。
翌朝、信じられないものが目に入ってきました。
「何で?」
私の部屋の中央にあの革靴が置かれていたのです。
「昨日確かに・・・。あれ?本当に何で?」
私は確認するように弟の部屋を確認すると、そこに革靴はありました。
「え!?じゃ、じゃあ・・・。」
嫌な汗をかきそうなぐらい緊張していた私はそっと自分の部屋の扉を開きました。
「・・・あ、あれ?」
けど、そこには私の部屋が広がるだけで革靴なんてありませんでした。
「気のせい?それとも寝ぼけてたのかな?」
二度寝する気になれない私は身支度を済ませ、弟たちが来るのを母と待つことにしました。
「・・・ねぇお母さん。」
「何よ!」
「お母さんさ、昨日私の部屋はそのままだって言ったじゃん。」
「言ったわよ!だから何!」
「本当は物置とか・・・あ~それは無いのかな?にしては荷物無かったし。」
「何が言いたいのよ!物置?あんたの部屋を物置にしなくっても部屋ぐらい余ってるわよ!」
「だよねぇ。じゃああの革靴はやっぱり弟?」
「僕が何?姉ちゃん。」
「よく来たな弟。」
「そりゃ来るよ。今日は墓参りって言っただろ。」
「おはようございますお姉さん。」
「嫁ちゃ~ん!今日も可愛いね!」
「えへへ。ありがとうございます。」
「うんうん愛くるしいのぉ。」
「おい!」
「てかあんた!私の部屋に革靴置かないでよ!」
「は?革靴?何言ってるんだよ姉ちゃん。」
「忘れてただけだろうけど、ちゃんと自分の物なんだから管理しなよ。ね!嫁ちゃん。」
「えっと・・・。」
「あれ?何かおかしかった?」
「おかしいに決まってんだろ姉ちゃん。」
「何で?」
「あんた!農業に革靴なんているんかい!」
母に言われて気づきました。
確かに、弟に革靴は必要ありませんでした。
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