第159話 麒麟園さんの怖い話~レインコート後編~
「やっぱりいないわよね?」
今度は公園内を散策もしたが、結局誰もいません。
「ここじゃない公園かしら?けど、ここ以外だと・・・。」
家の近くにある公園はここだけで、それ以外は隣町まで行かないと無いため流石にここで合っているとAさんは思うことにしたのです。
「いないものは仕方ないし、お薬でも買って帰りましょ。」
見当たらないことからAさんは薬局で風邪薬を買って帰ることにしました。
パチャ。
Aさんが帰る途中、公園から水たまりを踏んだような音が聞こえました。
「え?」
公園の方を見ると、黄色のレインコートを着た小さな子が水たまりで遊んでいたのです。
「あの子、かしら?」
娘が言っていた子が公園で遊んでいたことで、Aさんは少しだけホッとしました。
すれ違いで風邪をひかせては申し訳ないと思っていたからです。
「ねぇ。」
「・・・。」
「あの、娘と遊んでくれてありがとね。でも、ごめんなさい。今日、娘は風邪で寝込んでて。しばらくは遊べないの。本当にごめんなさいね。」
「・・・。」
反応がないその子が気になったAさんは正面に回って話しかけようとしたのです。
ところが・・・。
「本当にごめ・・・え?」
覗き込んだその子には顔が無かったのです。
正確に言えば、レインコートの中に頭そのものがなかったのです。
余りにも不思議で、不気味なその子にAさんは何も言えず、ゆっくりと後ずさり、逃げるように帰りました。
その日の夜、Aさんは娘の遊び相手について相談しました。
「ね、ねぇあなた。あの子のお友達について何だけど・・・。」
「友達?ああ~そう言えば墓参り行ってないな。」
「え?」
「ほらあの子だよあの子。幼稚園の頃よく遊んでたろ?黄色のレインコートがお気に入りのさ。」
その瞬間、Aさんの記憶の中のレインコートの中に思い出したあの子の顔があったそうです。
泣いて何かを訴えるあの子の顔が。
「後日談になりマスが、その家族はちゃんとお墓参りに行ったそうでありマス。」
もしかしてずっと訴えていたのかな。
「会いたかった、のかしら。その子はずっとお墓で待っていたのかしら。」
「わからないが、そうだと思いたいな。」
「きっとそうでありマス!自分はそう思いたいでありマスよ式子総司令。」
「ふふ。私もそう思うよ千夏。その方が綺麗だからね。」
「僕もです式子さん。何て言うか、ちょっと怖いけど不思議な温かさのあるお話しでした。」
「やるじゃない千夏。」
「えへへ。」
「うんうん。麒麟園君は良い話をするね。先生も見習わないとな。ところでこの話貰っていい?今度の合コンで・・・。」
うん、台無しですよ先生。
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