第158話 麒麟園さんの怖い話~レインコート中編~

「ねぇ、少しはお家で遊んだら?外は雨なのよ。」

「いーやー!」

「何でよ?お家でだって遊べるでしょ。」

「いやなの!」

「もう!偶にはお家で静かに遊びなさいよ!風邪ひいてからじゃ遅いのよ!分かってるの!」

「いや!」

「言うことを聞きなさいよ!何でそんなにお外で遊びたいのよ!」

「だって・・・。」

娘が何かを隠していることはすぐにわかったAさんは両手をギュッと握って言い聞かせました。

「ママはね、あなたを心配しているのよ?風で寝込んで辛いのはあなたなのよ?それにお外で一人で遊んでたら知らない人に連れて行かれちゃうかもしれないのよ?わかる?ねぇ?」

「ひとりじゃないもん。」

「え?一人じゃないの?誰かと遊んでるの?」

「・・・。」

「黙ってちゃわからないわよ。」

「・・・誰にも言わない?」

「言わないわよ。あなたのママを信じなさい。」

誰にも言えない友達ということがAさんには引っかかりました。

「んとね、名前は知らないんだけど、いつも公園にいて、私と遊んでるの。」

「えっと、その子は知らない子なの?」

「ううん。知ってるよ。だって幼稚園が一緒だったもん。」

娘の言葉にAさんはホッと胸を撫でおろしました。

同い年の子ならそれほど問題ないと思ったからです。

けど、ならなぜ名前を知らないのかがAさんの中で疑問になりました。

「幼稚園が一緒だったのよね?」

「うん。」

「なら何で名前を知らないの?」

「知らないから知らない。」

Aさんは気にはなったけど、いくら娘に聞いても答えが変わらないのでそれ以上は聞きませんでした。

それは心のどこかで同い年だからという安心感があったのだろう。

けれど、その安心感は危険なものだと知ることになったのです。


「えほっえほっ。」

「・・・38度。完全に風邪ね。」

「ママぁ。」

「今日はおとなしく寝てなさい。いいわね?」

「うん。でもね・・・。」

「何?何か言いたいことがあるなら言いなさい。ママがちゃんと聞いてあげるから。」

「お友達に遊びに行けないって言って欲しいの。今日もいると思うから。」

確かに娘を待ってあっちも風邪をひいてしまったら?そんな考えが頭の中をよぎり、Aさんは雨が降る中公園に行くことにしました。

「ここよね?」

家の近くの公園にAさんは向かいましたが、そこには誰もいません。

仕方なく家に帰ると、娘は急に怒り始めたのです。

「いなかったわよ?」

「いるよ!ぜったいいるもん!」

「ど、どうしたの?」

「いるったらいるの!なんでうそをつくの!ママなんかだいっきらい!」

「ちょ、ちょっと!?本当にどうしたの!?」

「いいからあっち行って!!」

動揺したAさんは娘の怒りように何も言えず、もう一度公園に行くことにしたのです。

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