第396話 柑奈さんの怖い話~瞬間移動する車 後編~
「結構歩くね~。」
「うん。でも、もう出口だね。」
結局Oちゃんの話してくれたことが起きることもなく、女の子の幽霊が見えることもなく、特に何事もなく私たちは○○○○トンネルを抜けてしまいました。
正直、頭の中は『タイミングが悪かっただけ!』とか『Oちゃんは話してた』みたいな言い訳ばかり考えていました。
トンネルを出てすぐ、私が口を開こうとすると友人たちが驚いた様子が目に入ったのです。
「ど、どうしたの?」
「いや・・・いやその・・・。」
「ねぇねぇ、あれってAちゃんの車~?」
「え?」
友人の指の先には見覚えのある車があったのです。
「いやそんなわけないじゃん!だってあたしの車あっちに停めてきたんだよ?ここまで一本道だったし、そもそも鍵はあたしが持ってるし!」
「だよね~。車なんて同じものたくさんあるし~。」
「そ、その通り!け、けど念のためね!」
そう言うと、Aちゃんはバックから鍵を出し、車に向かってドアロック解除のボタンを押しました。
ガチャッ。
車は何の抵抗もなく鍵を開けました。
驚いた私たちはゆっくりと車に近づき、運転席のドアを開けたんです。
「やっぱり~Aちゃんの~?」
「この座布団・・・あたしのと同じ。そ、それにこの飲みかけのジュースも!?へ?ど、どういうことなの!?」
間違いなくこの車はAちゃんの車でした。
飲みかけのジュースも、CDも、座布団も、後部座席のぬいぐるみも全部Aちゃんの車と同じ。でも、だとしたらおかしいんです。
「ここまで一本道だよね?だったらこの車がここにあるのっておかしいよね・・・わ、私!確かめてみる!」
友人の返事も待たずに私は駆け足でトンネルを抜け、車を停めた場所に戻ったんです。すると、そこにはAちゃんの車はあったんです。
「ある・・・じゃあやっぱりあれはAちゃんの車じゃない?でも、あんな偶然・・・とにかく!連絡しなきゃ!」
私は急いでスマホを取り出し、Aちゃんに連絡しようとしました。その時です。
「え?」
視界の端に女の子が見えたような気がしたんです。けど、そう思って顔をあげた瞬間に私は気を失ってしまったんです。何の前触れもなく。
「・・・ん?」
目を覚ますと、私はAちゃんが運転する後部座席に座っていました。
「あ!起きた?もうすぐ家着くよ。」
「わ、私いったい・・・。」
「なんかね~私らが戻ってきたら~倒れてたよ~?だからとりあえず家まで送ってこうって話になって~。」
どうやら私は気を失って倒れているところを友人に発見されたんだそうです。
何が起こったのかわからないままに私は家に帰ったのです。
私にいったい、何が起こったんでしょうか。
「以上よ。」
ふむ。なんとも不思議な体験だな。
「心霊現象・・・何でありマシょうか?」
「さぁてね。だが、心霊現象だったとしたらとても興味深い。よく言われるポルターガイストとも言えないし、神隠しでもない。彼女ら自身ではなく車に起こった現象なのか、彼女らに起こった現象なのか。じゃあOちゃんというアイドルが話した女の子の幽霊は?ふふっ。本当に謎だらけでとても興味深い。」
そもそもこれって心霊現象と断定していいのだろうか?
確かにありえない事態が起こっていることは認めよう。
けど、それだけだ。ありがちな幽霊が見えたとかとは違う。
「ま、それはゆっくりと考えることにしよう。では、本日は解散。皆、帰ろうか。」
そして、僕にはもう一つ謎がある。
それは・・・触れられることすらなく今現在も華麗に無視されている神楽坂さんの存在なんだけど・・・ま、いっか。
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