第311話 尾口先生の怖い?話~猫の恩返し?後編~
とある日の出来事です。
「今日は晴れてるな~。」
独り言をつぶやいて出かけようとした時です。
「ニャ~。」
「え?」
バニラの声が傘の方から聞こえたのです。
「・・・気のせいかな?なんか傘ら辺から・・・?」
空耳と決めて出かけたその日に晴れていた天気は急変して雨が降りました。
またある日での出来事では。
「あれ?あれ~?」
「どうしたのKちゃん。」
「いや、その、イヤリングの片方が見つからなくって。」
「何処かに落としたんじゃないの?」
「かもしんない。」
「ニャ~。」
「え?」
バニラの声がする方を見ると、イヤリングが落ちていました。
「・・・あった。でもさっきのって・・・。」
「Kちゃ~ん。遅れるわよ~。」
「あ、はーい!」
そしてまたある日の出来事では。
「はぁ。今日も疲れた。でも明日は休みだし、溜まってるドラマでも・・・。」
「ニャー!!」
「え?」
バニラの声に気づいて顔をあげると、目の前を居眠り運転の車が通りすぎ、コンビニに突っ込んでいきました。
「あ、あっぶな。」
それからです。
私はバニラが見守ってくれているんだって思うようになったのは。
だからバニラの声には素直に従うようになっていたんです。
けれど、あの日はよくわかりませんでした。
「ニャー!」
バニラの声はするのですが、私がいるのは家の中で、特に外に出る用事もなく、失くした物もありません。
「ニャー!」
けど、バニラは朝早くからずっと大声で鳴いているのです。
「バニラ、私に何を伝えたいの?」
「ニャー!」
「私、失くしものは無いよ。外も出ないし、本当に何が伝えたいのかわからないの。」
「ニャー!」
「バニラ・・・。」
「ニャー!」
鳴き声はお昼過ぎまで続き、私は軽いノイローゼ気味でした。
「ニャー!」
「もう!うるさいよバニラ!ニャーニャーばかりじゃわかんないよ!!」
せっかくの休日、日ごろの疲れを癒そうと思っていたのに。
そんな自分勝手な思いを抱きながら、私は家を飛び出しました。
すると、バニラの泣き声は止んだのです。
「何だよ。私に家にいて欲しくないのかよ。」
不貞腐れた私はマンガ喫茶で時間を潰してから家に帰りました。
すると、家の前は人だかりができていたのです。
「な、何?」
「K!?」
駆け寄った母に想いっきり抱きしめられ、事の経緯を聞きました。
お昼過ぎ、ちょうど私が家を飛び出した時間の後に、放火魔が家を燃やしたのです。
あのまま家で過ごしていたら・・・そう考えるとゾッとします。
私は、バニラに命を救われたのです。
「ニャ~。」
「うん、わかったよバニラ。」
それからはしっかりとバニラの泣き声に耳を澄ましています。
「ペットとは、時に不思議な力を持っていますよね。皆さんのペットも、何かしらの不思議な力があるのではないでしょうか?ですから愛情を忘れずに。」
「つまりペットを飼っていない私たちの命は助からないと。」
「いや、式子さんそういうことではないですから。」
「ふふっ。冗談だよ。」
いや冗談に聞こえねぇーよ。
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