第310話 尾口先生の怖い?話~猫の恩返し?前編~

「続いての話は、女性が体験した不思議な出来事。皆さんはペットは勝っていますか?犬や猫、最近は蛇やトカゲをペットとする人もいますね。」

「そうなんですか?」

「ああ。私の知人にも蛇を飼っている人はいるし、最近では珍しくもないらしい。」

ふ~ん。

何ていうか、感覚的にペットと聞かれたら犬猫を想像しちゃうなぁ。

「そんなペットたちにしっかりと貴方は愛情を注いでいますか?これは、とある社会人の女性が体験したお話しです・・・。」


私が中学生の頃だったと思います。

共働きだった両親はいつも帰りが遅く、私が何処で何をしていようが知られることは余りありませんでした。

だから私にとっては都合がよくって、夜遅くまで遊び、両親が帰る前に寝ているという生活をしていました。

そんなある日、私は出会ったのです。

もう太陽が沈み切った薄暗い夜。

電灯の下で、美しい白い毛並みを光らせたその猫に。

「・・・何だよ。」

その猫は鳴くこともなく、ただただ私をじっと見つめていました。

「こっち見んな。」

そう吐き捨てて一度はその場から立ち去ったのですが、どうにも気になりすぎて、結局私はその白猫を家に連れて帰っていました。

「一応、お前のことを洗うからな。」

白猫はとてもおとなしく、私のされるがままに体を洗われ、出されたキャットフードを食べ、私の膝で小さな寝息を立てて眠りました。

「ただいま~。」

そうこうしているうちに、母親が帰ってきました。

「あれ?Kちゃんまだ起きてるの?」

夜に会うのは久々で、奇妙な感じはしましたが、私は素直に白猫のことを話しました。

「猫ちゃんを拾ってきたと。それで、許可が欲しくて起きてたって訳ね。ママのこと待っててくれたのかと思った~。」

「ごめん。」

「でもどうして?Kちゃん、昔ペットショップで猫を飼おうとした時嫌がったじゃない。」

「あの時は、パパとママとの時間が少しでも欲しくて。その邪魔になりそうなものは極力避けたかったの。でも、なんかこいつは・・・その、私と同じ匂いがしたの。」

「ん?どういうこと?」

「何ていうか、似た者同士?みたいな。」

「ニャ~。」

「ふふっ。そっか。じゃあ名前を付けてあげないとね。」

その白猫を私は“バニラ”と名付け、それまでの夜遊びを止め、バニラと過ごす時間を増やしました。

バニラは可愛くって、とても人懐っこくて、私はどんどんバニラに愛情を注ぎ、気づけばバニラ中心で生活していたんです。

そして、中学校、高校、大学と共に過ごし、社会人二年目の秋に、バニラは亡くなりました。

とても悲しくて、とても辛かったけど、バニラがくれた日々を思い、私は前向きに生きるように頑張りました。

そんなある日、私は思いもよらない出来事に出くわすようになったのです。

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