第309話 尾口先生の怖い?話~大好きなお婆ちゃん後編~
「大きい・・・。」
初めて、自然の雄大さに僕は感動しました。
滝はそこに存在していることを主張するように激しく流れ、大きな音を響かせていました。
「すごいわね。」
「ハハハ!父さんはここだけは必ず来ようと思っていたからな。どうだ?Y。」
「すごい・・・すごいよ!父さん!」
「ハハハ!」
「もっと色々見てきていい?」
「いいぞ。ただし、父さんたちの目の届く範囲な?」
「うん!」
僕は興奮を抑えきれず、駆け足で柵まで行きました。
近くで見ると、より一層自然の偉大さを感じることが出来た気分になったんです。
「すげぇ・・・。」
だから、その悪意に気づかなかったんです。
「もっと近くで見たいなぁ。」
知らず知らずに言ってしまったこの言葉が悪意を引き寄せていたことも、知りませんでした。
「・・・まただ。」
あの旅行から帰ってから毎日のようにとある夢を見続けました。
それはあの滝が流れる場所。
柵の無い場所に僕は立ち、滝の奥まで続く道をただ茫然と見ているだけ。
何故か、この夢だけは起きた後も覚えているんです。
「・・・この先に何があるんだろう。」
好奇心はあるのですが、行ってはならないような気持ちもあるのです。
でも流石に毎日見続けていると、次第にその気持ちは薄れていきます。
僕は、そうでした。
「今日は、行ってみよう。」
そう思うと、体は自然と抵抗なく動き、一歩ずつ滝の奥まで続く道を歩み始めました。
そして気づきました。
その道の先に、ニタニタと笑う老婆に。
「もしかして・・・お婆ちゃん!?お婆ちゃん!」
僕は早く会いたい。
そんな気持ちで駆けだしました。
すると突然、腕を掴まれたのです。
「え?」
振り返ると、見たことない怒った顔のお婆ちゃんが立っていました。
「お、おばあちゃ・・・。」
「ここから先に入ってはいけないよ。」
力強いお婆ちゃんに手を引かれながら来た道を戻りました。
何となく気になって後ろを振り向くと、お婆ちゃんだと思っていた老婆は知らない人でした。
「この体験がきっかけで、少年は毎年休むことなく、お墓参りに行っているそうです。」
お婆ちゃんが助けてくれたんだな。
うんうん、良い話だなぁ。
「皆さんも、お婆ちゃんに感謝していることはありますか?また、お墓参りはちゃんとしていますか?貴方を危険から守ってくれるのは、もしかしたら亡くなった祖父母。かもしれませんよ。」
「いい話でしたね式子さん。」
「ああ。個人的には少年にはその老婆に会ってもらいたかったけどね。どうなってしまうのか。ふふっ。」
「次行きましょう尾口先生!」
いい話はいい話で。
そういうことにしましょうよ、式子さん。
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