第314話 研究成果報告当日

八月の上旬。

外は喧しいぐらいにセミたちが元気に鳴いている。

夏、そう感じることが当たり前の今日この頃。

僕は凍り付くような寒気の中、今まさに研究成果を報告する。

「では、本日最後の研究成果をお願いします。」

生徒会長を務めるこちらの女性の名は阿賀野芽衣あがのめいさん。

今回のこともあり、僕なりに調べた結果。

皆が口をそろえて言う言葉は“冷酷無慈悲の氷結女”。

その異名とも呼べる代物が伊達ではないことをこの部屋が語ってくれる。

だって審査員の他の生徒会の人が震えてるもん、寒さで。

「ああ。これから私たちオカルト研究会の研究成果を報告する。」

「オカルト?」

うわ~お。

明らかな敵視を感じちゃいます!

「・・・。」

「まさか聞かずに評価をするという愚考はしませんよね。」

し、式子さんの先制攻撃!?

「成果報告はしっかりと拝聴します。ですが、何も評価は成果だけで決めてはいませんよ。」

か、返したーー!!?

「ふふっ。それを聞けて良かった。では、始めましょうか。」

ぼ、僕には見える!

二人の間で戦う獣たちが!!

「いえ、貴方達には始める前にお聞きすることがあります。いいですね?」

「どうぞ。」

「ではまず初めに、校外の生徒を招き入れているという話は本当ですか?」

か、神楽坂さんのことだ!?

「ああ。本当だよ。」

「それについて貴方は何も問題が無いとお思いですか?」

ど、どうすんだ式子さん!?

「無いな。勉学を邪魔する理由が生徒会長にはあると?」

「・・・どういう意味でしょうか。」

「彼、神楽坂星夜君は勉学の為にオカルト研究会を訪ねてきている。それを邪魔する理由が生徒会長にあるのかと丁寧に聞いているのだが?」

「・・・ありません。」

「ならこの質問はもういいな。」

し、式子さんのパンチが入ったーー!!

「では、続いてお聞きします。本日の研究成果発表、貴方達二人しかいないのは何故ですか?例外を除き、基本的に所属している生徒は全員参加とお伝えしたはずですが?」

し、式子さん!?

「彼女たちはオカルト研究会以外にも部活に入っている。今日はそちらに出向いている。私としてもこちらを優先して欲しいという気持ちはある。が、それを強要することはしてはならない。そう私は考えている。」

か、躱した!!

「・・・結構です。」

ふ、ふぅ~。これで何とか発表に・・・。

「最後に。」

まだ・・・だと・・・。

「尾口先生が私情目的で生徒を呼びつけているという話も耳にしました。特に、そちらの一年生高宮さんを。」

何という情報網・・・。

「それは事実ですか。事実ならばしかるべき対処を・・・。」

「事実です。」

し、式子さん!?

「では、処分は追って・・・。」

「事実ですが、彼も嫌がってはいません。進んで尾口先生との交流を楽しんでいます。先生と生徒との交流すら生徒会長は反対なのですか?」

「それは・・・。」

「高宮君が女生徒ならば私もいくらか考慮しますが、彼は紛れもなく男子生徒。先生と生徒という垣根を超えた友情を、私は邪魔する気はありません。」

決してホモではない!断じて違うからな!!

「・・・結構です。成果発表に移ってください。」

い、いよいよだ。

始まるんだ。オカルト研究会の存亡をかけた戦いが!

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