第318話 研究成果報告~口裂け女について。その4~

あの女にいる帰り道。

何事も無かったように佇む女を前に、Bは俺にこう言いました。

「これから俺たちで話しかけよう。お前は黙ってるだけでいい。ただ、もし逃げるようなことになったらこう叫べ。“ポマード”って。」

「ポマード?なんだそれ?」

「いいからそう叫べ。」

それだけ言ってBはあの女の前に立ちました。

「・・・。」

何も言わずに佇む女にBはこう言いました。

「何してんだよ。」

「・・・。」

「邪魔だから消えろよ。」

「お、おい!?」

「・・・キヒ。」

「へ?」

ゆっくりと帽子を脱ぐと、美人な年上の女性が立っていたんです。

「わたし、きれい?」

「・・・知らねぇよ。」

「お、おい!あ、あの!俺は綺麗だと、思いますよ。」

「馬鹿!?」

「はぁ!?馬鹿って何だよ!」

「馬鹿は馬鹿だからだ!」

「んだと!!」

「うふふ。本当にきれい?」

「は、はい!」

何故だか当時の俺はこの女性と仲良くなりたいって強く思っていました。

Bのバツの悪そうな顔を無視し、女性はゆっくりとマスクに手を伸ばしました。

「ほんとうにきれい?こんな、口でもぉぉぉぉ!!?」

投げ捨てるようにマスクを取った女性の顔は耳の下まで口が切り裂かれていました。

「・・・へ?」

「逃げるぞ!!」

Bに手を引かれ、走り出すと、あの女性は物凄い速さで追ってきました。

先程までの美人な顔は無く、醜悪に満ちた醜い顔で。

「ひっ!?」

「叫べ!!」

「さ、さけべ!?」

「ポマーードーーー!」

Bは叫ぶと消えました。

「び、B!?」

驚いたほんの一瞬、たったその一瞬で俺は女に肩を掴まれました。

「ひゃ!?」

「つ~か・ま・え・た。」

「ぽ、ぽ、ぽま!?」

「いただきま~・・・。」

「ポマーーードーーーー!!?!?」

やっとの思いで叫ぶと、夢だったように俺は電柱の前に立っていました。

「は、はれ?」

「無事か!?」

「お、俺は?」

「やっぱり口裂け女だったんだよ。」

噂だと思っていた口裂け女。

でも、あれはそれ以外に説明がつかず、結局Bの言う通りだったんだと思うようにしました。

「残酷な話だが、Aはもう・・・。」

それ以上言わなくてもわかりました。

Aは助からなかったんだと思います。

その証拠に、今でもAは行方不明です。


「以上が、口裂け女の話しです。」

ふ、ふぅ~。噛まずに話せたぞ。

「この話は最近聞いた話です。どうでしょう。何か疑問に思うことはありませんでしたか?」

式子さんの問いかけに生徒会の人たちは周りを確認するように首を縦に振っていた。

「大変結構。では、これより解説に移りたいと思います。」

さぁ!ここからが研究成果報告だ!

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