第219話 神楽坂さんの怖い話~おいでよ。後編~
次の日、母は最期に中庭から建物を見に行ったそうです。
建物の周りは柵が立っており、有刺鉄線までまかれていました。
入り口という入り口にはすべて板が張り付けられていて中にはどう足掻いても入れそうになかったそうです。
「確かにこれじゃ・・・。」
その時、母は視線を感じて上を見上げました。
丁度、女性が立っていた窓を見ると、やはり同じような浴衣を着た女性が立っていたそうです。
けれど、その日は違いました。
よく見ると、他の窓からもこちらをじっと見つめている人が何人もいたそうです。
「ひっ!?」
母はゾッとして逃げ帰り、それからは閉鎖された建物にも中庭にも近づかなかったそうです。
ここからは祖母から来た話になるのですが、その建物ではいつも不思議なことが起こっていたのだそうです。
トイレに行くと扉を閉めていても必ず開いてしまったり、変な音が鳴ったりなどはしょっちゅうあったようです。
気味悪く思っている時に、白い影が祖母の前を横切り、それが母を近づけないきっかけになったそうです。
現象がもっと酷かったのは銭湯のようです。
その建物の横には少し進んだ先に銭湯があったそうなのです。
その銭湯の窓を見ると必ずと言っていいほど人と目が合うらしかったのです。
もちろん銭湯自体も長年使われておらず、その頃には完全閉鎖されているので、人が居るはずはないのだそうです。
今ではその元病院だった建物は取り壊され、土地はマンションとして利用されているようですが、風の噂ではマンションになってからは自殺者が多いそうです。
母はあの時、『おいでよ。』という言葉に耳を傾けなくて心底良かったと、私に笑って話してくれた話でした。
「以上だよ子犬ちゃん。」
ふむふむ。これはなかなかだな。
「どうだい?恐怖を覚えただろう?」
「いや別に。」
「へ?」
「ただ、とても不思議で奇妙な話にワクワクしました。流石は神楽坂さん!」
「そ、そうだろ!俺の話は面白かっただろ?」
「はい!」
「んふふ!ならいいんだ。子犬ちゃんの喜びが俺の喜びだからね。」
「おや?星夜、来ていたのかい?」
「式子!よく来たね!俺の話を聞いて行かないかい?」
「ほぉ、どんな話だい?」
「んふふ。子犬ちゃんも喜んだ話だよ。」
「ほぉ。優君が。それは楽しみだ。」
「では、式子の許しも得たし、話そうか。」
あ、やっぱり二回目コースなんですね。
「どうだい式子。怖いだろ?」
「・・・星夜。」
「んふふ。なんだい?」
「すまないがこの話を私は知っている。」
「嘘だああぁァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!?!?」
あ~お約束ですね~。
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