第92話 柑奈パパの怖い話~話し相手が・・・中編その1~

「あ~あ。イジメとかなら何とかなったかもしんねぇけど、そんな話も聞かねぇしな。好きな女子に振られたとかでもねぇし。本当に何が理由なんだろうな。」

「わかんないよ、俺には。」

「けど、家には毎日行ってるんだろ?」

「・・・まぁ。」

「会えねぇの?それとも家にも入れてもらえねぇのか?」

「いや。あいつのお母さんはちょっと疲れた笑顔で俺を出迎えてくれるよ。あいつには会えないけど。」

「まったくよぉ。俺たちに理由ぐらい話してくれてもいいよなぁ。俺たち親友だろ?」

「まぁ。」

毎日のようにBとはこういう話ばかりしていた。

それだけBもあいつが心配だったんだ。

もちろん俺も心配している。

Bには言ってないが、実はあいつの部屋の前で今日の出来事なども話していたんだ。

「今日も行くんだろ?」

「うん。」

「俺の分もあいつに声かけてくれよA。」

「わかってるよ。」

いつもの会話にいつもの帰り道、そしていつもの幼馴染の家。

この変わらない繰り返しを俺は時間が壊れたように続けていた。

そしてその日も同じように繰り返されると、俺は思っていたんだ。


「あら、いらっしゃいA君。」

「こんにちわおばさん。あの、あいつは・・・。」

いつも力のない笑顔が苦手だったなあ。

「・・・ごめんね。」

「いいえ。」

「お茶でもどうかなA君?」

「・・・いただきます。」

おばさんとは学校であった出来事を話すのが当たり前になりつつある。

それはおばさんが少しだけ元気になってくれていると、俺が勝手に思っているからでもある。

「んで、今日の体育ではサッカーだったんだけど、俺たちのチームは負けちゃって。」

「ふふふ。」

「あ、後そろそろテストなんですよ。俺、数学が苦手で。」

「A君なら勉強すれば大丈夫よ。」

「ですかね。・・・そろそろあいつに話しに行ってもいいですか?」

「ええ。きっとあの子も楽しみに待っているわ。」

「・・・だと、いいんすけどね。」

30分ぐらいおばさんと話してあいつの部屋の前に行く。

ここまではいつもと同じ流れ。

そしていつもなら何の音もしない部屋の前で俺は学校の出来事を話したり、不登校の理由を聞いたりする流れ。

だけど、その日は・・・。

「よぉ。性懲りもなく今日も来たぜ。」

「・・・。」

「いい加減さ、不登校の理由を教えてくれね?」

「・・・。」

「俺でよかったら力になるし、Bだってお前のこと待ってるぞ。」

「・・・。」

「・・・やっぱダメか。んじゃ、いつも通り今日のことを・・・。」

「・・・ヒャ。」

「え?」

俺は咄嗟のことで動揺したんだ。


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