第79話 式子さんの怖い話~呼び出しボタン中編その2~

「へ~Aって一人暮らしだったんだ。」

「そういうBも一人暮らしじゃん。」

大学生活を順調に謳歌おうかしていた俺はようやく親友と呼べる男に出会えた。

それがBだ。

Bは俺と違ってイケメンだけど、頭が悪い。

この大学にもギリギリで入れたらしい。

「いや僕は親にお金出してもらってるからさ。全部自分でやっているAの方がすごいと思うよ。」

「そうか?たまたま俺の夢が一人暮らしすることだっただけじゃね?」

「そうかもしれないけど、僕はすごいと思うよ。」

Bはとても純粋で、俺のことをよく褒めてくれるからとても心地いい。

「ねぇ今度、互いの家を見に行かない?」

「お!いいね~。俺は部屋は綺麗だから自信あるし。」

「ぼ、僕も掃除しとくよ!?」

「へへっ。頑張れよB。俺の採点は厳しいぜ?」

「そ、そんなぁ。」

よくこうやってじゃれあって家に帰っていた。

「ただいまっと。」

誰もいないけど、なぜか挨拶は習慣になっていたっけ。

「まずは何よりも風呂だ!」

いつも迷うことなく俺は風呂を沸かす。

沸くまでの間に片付けと洗濯もの、レポートがあればその資料準備を済ます。

それだけ時間あればちょうど良い頃合いで風呂が沸くからだ。

ピピッ。

この音が風呂が沸いた合図。

俺は脱衣所に着替えを置き、脱いだ服を洗濯機へ入れる。

風呂場に入るとまずは湯加減チェック。

うん、今日もいい温度だ。

それを確かめてから頭を洗い、体を洗い、顔を念入りに洗う。

そしていざ入浴!

「・・・ふぅ~・・・。」

心地よい一時。

この一時だけは誰にも奪わせはしない!

「・・・ん?」

この時初めて気がついたんだ。

『呼び出し』と書かれたボタンが光っていることに。

「何で光ってるんだ?」

それはほんの好奇心だった。

無視しても良かったが、この機能がどんなものなのか。

その好奇心に負けて俺はボタンを押した。

ププッ。

音がしたと思ったら画面にリビングが映し出される。

俺の住んでいる部屋だ。

それ以外に変わった様子はない。

「なんだぁ。」

この時の俺は故障かなんかだと思い、気にも留めなかったんだ。

「てなことがあってさ。」

「へ~。」

俺はこのことをBに話した。

「故障かもね。業者に見てもらったら?」

「ん~いいかな。」

「何でだい?」

「確かに故障かもしれねぇけど、別に困ってはいないしさ。何か支障があるわけでもないし、金がかかるだけだからいいかな。」

「そっか。ところで僕の家に来るのは明日でいいかな?」

「おう!ちゃんと掃除したか~?」

「ご安心を。僕には出来る彼女がいるので。」

「クソが!羨ましすぎだろ!!」

「僕のこの顔が怖い。」

「頭は馬鹿だけどな。」

「二重の意味で僕の頭が怖い。」

「あははは!」

「ふふふ!」

馬鹿笑いしながら俺はあいつがいる家に帰ったんだ。

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