第78話 式子さんの怖い話~呼び出しボタン中編その1~
では待っている間に三枚目を・・・ん?なんだこれは?
風呂トイレはもちろんのこと、部屋が三部屋もあるぞ?
駅からは一番離れているが、自転車で行けない距離じゃないし、おまけに近くにスーパーもあるじゃないか!
それなのにこの値段?
・・・怪しくない?
いやこれ絶対に事故物件だよね!?
けどこの好条件!
・・・いや、やめておけ。
これは絶対に怪しいから!!
「お客様?」
「ひゃい!?」
「そちらの物件にご興味があるのですか?」
「え!?は!?はい!?」
「確かにこちらの物件は好条件なのですが、一つだけ問題がございまして・・・。」
ほらな、やっぱり。
だと思ったんだよなぁ~。
だって絶対に怪しすぎだって!
この好条件でこの値段、怪しまない方がおかしいだろ。
はぁ~他の場所でも聞くことも視野に・・・。」
「実はクローゼットがございません。」
「・・・はい?」
「ですからこちらの物件はクローゼットがございません。部屋が三部屋もあるのにどの部屋にもクローゼットはございません。おそらく設計ミスだろうと上も話しているのですが・・・。」
「え?クローゼットが無いだけ?」
「ええ。先程からその後説明を・・・。」
「事故物件は?」
「はい?」
「あ、いえ何でもないです!この物件も見せてください!」
「畏まりました。車回しますので少々お待ちください。」
やったぜ!!
クローゼットが無い設計ミスというだけでこの値段!
当たりだ、間違いなく当たりの物件だよこれ!!
いや~善行は積んでおくべきだよなぁ。
この後、俺は二つの物件を見せてもらったが、正直この部屋にばかり気持ちが行ってしまっていて、他の話が頭に入って来ていなかった。
「これから一人暮らしだけど、大丈夫なの?」
「大丈夫だよ母さん。俺が母さんに色々教わっていたの知ってるだろ?」
「そうだけど・・・やっぱり心配よ。」
「これで最後ですね?」
「はい!ありがとうございました!」
引っ越しを終えた俺は荷物整理をしながらこの部屋を自分色にどうやって染めようか考えていた。
「おっと!荷物整理もいいが、まずは風呂の準備だよな。汗かいた後は絶対に風呂入りたいし~。」
この時の俺は浮かれてばかりだった。
好条件の物件に加え、何と風呂が最新の設備が搭載されていたのだ。
ボタン一つでお湯をすぐに沸かし、沸くとすぐに知らせてくれる。
近代文化の勝利である。
「よし!これで荷物整理に集中できるぞ!これをあっちに置いて。う~んこれは・・・ここにするか。」
この時の俺は気づいていなかった。
風呂のパネルで光り輝く一つのボタンに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます