第335話 百物語合宿~お題:病気 中編~

入院している間、腹痛との戦いでした。

原因不明でもはや死ぬんじゃないかって思いました。

「ほら。お薬飲める?」

「ううぅ。の、飲みたくない。」

「ダメよ。飲まなくちゃ良くならないわよ。」

「お腹痛くて何も入れたくない。」

「お願いだから薬だけでも飲もうね。」

俺は無理矢理薬を水で流し込み、すぐさま目を閉じて寝ることに努めました。

寝ていれば痛みを忘れられたのです。

「ん・・・。」

その日、昼間から寝ていたせいで俺は深夜に目を覚ましてしまいました。

「まだ暗いなぁ。っ!いてて!まだ腹痛いてぇのかよ!」

再び寝ようと思いましたが、ずっと下痢をしていたこともあり、漏らすことだけはしたくなかった俺は無理をしてトイレに向かったのです。

「やっば。ちょーえぇぇ・・・。」

夜の病院は言いようのない恐怖があります。

幽霊とか妖怪とか信じていない俺でも、ここには何かいる。

そう思わされるほどに怖いのです。

「ま、まだかよぉ・・・。」

俺の病室はその棟の一番端っこで、トイレは真ん中付近。

昼間ならそう感じませんでしたが、夜であり、恐怖も感じていたから余計に遠く感じてしまいました。

一歩、一歩、また一歩。

トイレに近づいている時だったと思います。

不意に俺は変な感覚になったんです。

「何だろ・・・人の気配を感じないような・・・。」

恐怖のあまり変な感覚になってしまったのだろう。

そう思っていた時でした。

俺の目の前に無人のナースステーションが入ったのは。

「・・・え?」

子供ながらにそれがおかしいということはなんとなくわかりました。

それでも、自分に言い訳を言い聞かせ、ナースステーションの近くのトイレに入りました。

「ふぅ~・・・いてて。」

ほとんど水みたいなものしか出ませんでしたが、それでもすぐにはトイレから出ず、しばらく籠っていたんです。


ペタッ。ペタッ。ペタッ。


足音が聞こえてきたんです。

(誰か来たのか?ナースさんかな。)

そんなことを考えていると、足音は隣の部屋に入りました。

不思議な緊張感の中、先に俺がトイレから出ました。

急いで戻ろうと思ったのですが、何となく振り返ってしまったのです。


ペタッ。ペタッ。ペタッ。


トイレから出てきたのは黒い、子供の影のような感じでした。

目の錯覚か?そう思いました。

それは俺には目もくれず、反対方向にゆっくりと歩いて行きました。

「どうしたの?」

「ひゃい!?」

黒い影を見送っていると、後ろから声を掛けられました。

振り返って驚きました。

先程見た時には無人だったナースステーションに人が3人もいたのです。

「ダメでしょ。こんな時間に起きてちゃ。」

俺は何も答えられないままナースのお姉さんに手を引かれて、その日は病室に戻りました。

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