第295話 高宮君の怖い話~探偵の事件簿中編その2~

依頼を受けた次の日。

俺は早速事件現場を見せてもらうことにした。

「警察とかはいないんですね。」

「もう、5年も前のことですから。」

家の中はとても綺麗だったが、生活感を感じなかった。

「こちらです。」

リビングに入ると、ドラマなんかで見るような白い線の跡はまだ残っていた。

「ここに妹さんが?」

「はい・・・。」

「・・・この白い線は正しいですか?」

「はい・・・。」

白い線は真っすぐに引かれ、とても苦しんで暴れたような感じではない。

言い方があれかもしれないが、死を受け入れているように思えた。

「色々やらせて頂きますよ。」

「お願いします。」

俺は一通りリビングを調べた。

流石に凶器になった包丁は無かったが、調べれば調べるほどに自殺の線が濃厚だった。

ここまで綺麗に自殺であると証明されると、返って怪しく思える。

俺は女性に許可を貰い、妹さんの部屋も見させてもらった。

「こちらです。」

「失礼しますよ。妹さんは大学生ですか?」

「はい。」

その部屋は恐らくだが、昨今の大学生らしい部屋だと思う。

特に怪しい感じもなく、また悩んでいるような感じもしない。

(ますます自殺だと考えにくいな。だが状況証拠は・・・。)

「何か、わかりますか?」

「いえ、さっぱりです。」

「そう、ですか・・・。」

「でも、疑問は大きくなりましたよ。」

「え?」

「妹さんの部屋を見ても自殺しそうな理由は見えないし、リビングも自殺したにしては不気味なぐらい綺麗だ。仮に自殺だったとしても、俺は調べてみる価値はあると思いましたので、引き続き調べてみますよ。」

「っ!お願いします!!」

(やっぱ美人に弱いな、俺は。)

俺はまず彼氏に話を聞いてみることにした。

「あ~ごめんね。こんなおっさんが呼び出して。」

「いえ。というか、お兄さんは誰なんですか?」

「いや~実は君の元カノでいいのかな?その事件を調べて欲しいって、お姉さんに頼まれた探偵だよ。」

「た、探偵!?探偵って本当に実在したんですか!?」

「ま、君の目の前にいるしね。んで、早速で悪いけど、録音させてもらうよ。」

彼は緊張した様子だったが、質問には全て素直に答えてくれた。

「彼女との出会いは、講義が一緒だったんです。それで、話すうちに趣味があって、僕から告白しました。彼女はすぐに了承してくれて、その、ラブラブだったと思います。」

「いいね~若いって。じゃあ悩みとか聞いたことあるかな?」

「悩んでいる様子が無かったので聞いたことは・・・。」

「んじゃ、ストーカーなんかの被害は?」

「無いですね。そういうことがあったら話してくれると思いますし。」

「そっか。んじゃ最後になるけど、彼女に気になる様子は?」

「ありませんでした。」

やはり、自殺の線は動悸が薄い。

そう、俺は感じた。

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