第83話 柑奈さんの怖い話~彼女。後編~

「今日はありがとうございました。」

「うん!こちらこそ!それで、その・・・本当にここでいいの?」

「はい。駅から電車に乗れば帰れますから。」

「そうですか。では、これで・・・。」

「はい。本当に今日はありがとうございました。」

勘違いだったと思う。

けれど僕にはそう見えたんだ。

彼女が去る際に笑顔から悲しい顔に一瞬だけ変わったということ。

「あの!」

「はい?」

「あ、その・・・も、もしよかったら!あ!?違うそうじゃなくって!その!ぼ、僕と付き合ってください!」

高校生のような告白だった。

正直今思い出せば恥ずかしい限りだ。

「私が隣にいてもいいんですか?」

「はい!」

「そう・・・。」

彼女が俯いた時は正直、怖かった。

脈あると思って告白したんだからさ。

けど、告白してよかったと思う。

「その、離さないでいてくれますか?」

正直、逆プロポーズだと思ってしまった。

「はい!貴方が僕を見限らない限り精一杯幸せにします!」

「嬉しい・・・じゃあ私は貴方に一生ついていきますね。」

「はい!」


その後、僕たちは何回かのデートを経て、同棲を始めたんだ。

「ただいま!」

「おかえりなさい。」

家に帰ると出迎えてくれる美人の彼女。

人生毎日がバラ色になったんだ。

本当に毎日が幸せで、できれば仕事中も彼女を側に感じたくて、写真を取ろうとした。

「いいかな?」

「ん、ん~。でも、私写真写り悪いよ?」

「そんなことないよ!ね!お願い!」

「う~ん。じゃあどうぞ。」

彼女と並んで、恥じらいも無くピースして写真を取った。

「全然問題ないじゃん!」

写真の中の彼女も綺麗だった。

「・・・よかった。」

「え?」

「ううん。なんでもない。」


「ふへへ。」

「何にやけてるんだい?」

「いや~彼女のことを思い出しまして。」

「ああ。そう言えばそんな話を聞いたな。どんな子なんだい?」

「見ますか?写真!」

「是非見せてくれ。」

「これです!どうですか?可愛いでしょ?」

「・・・君はナルシストなのかい?」


「この時同僚が見た写真には彼しか写っていなかったそうよ。」

「なるほど。彼は幽霊と憑き合うことになったんだね。」

「まぁ、そうなるわね。」

柑奈は立ち上がると、背筋をぐっと伸ばす。

「は~いい時間ね。そろそろ帰ろうかしら?」

「・・・柑奈は、彼氏が欲しいと思うのかい?」

「はいぃ!?」

「いや、この話を聞いてね。私は自分の恋愛観を知らないなと、そう思ってね。」

「そ、そりゃその・・・。」

柑奈は脳裏に浮かぶとある男子の顔を振り払うように首を振る。

「遅れてすいません!!あれ?どうしたんですか柑奈さん?顔が真っ赤ですよ?」

「うるさい!!これは、その・・・そう!風邪よ!」

「大変じゃないですか!?」


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