第280話 救世主、尾口先生

七月もあと少しで終わる頃、僕たちオカルト研究会のメンバーは尾口先生に招集された。

「やぁ。集まってくれたね。」

「おはようございます尾口先生。」

尾口先生が笑ってる?何かいい事でもあったのかな。

「今日は朝早くから集まってくれてありがとう。君たちにすぐに知らせたくてね。」

「何かいい事でも?」

「うん。実にその通りだ式子君。だがその前に千夏君にその後の進捗状況を聞いてもいいかな?」

そういえば生徒会の件、もとい生徒会長はどうなったんだろう。

「どうなのよ千夏。」

「あははは。全然だめでありマスね。全くと言っていいほど勉強以外の相手をしてくれないでありマス。」

マジかよ・・・。

「ちょっとどうすんのよ!八月なんてすぐよ!すぐ!」

「そう言われましても・・・。」

「まぁ待ちたまえ柑奈君。」

意味ありげに眼鏡を動かす尾口先生は、体格のこともあり、若干怖い。

これには柑奈さんも黙っちゃうよね~。

「君たちに、僕から起死回生の一手を与えよう。」

「起死回生の一手?何ですかそれは?」

「ふふふ。実はね、僕とは違って研究会や同好会にしか顧問の役割を持っていない先生が生徒会長に話し合いを持ちかけてね。3、4度の話し合いの末に、チャンスを貰ったんだ。」

チャンスを貰ったって・・・生徒会長って何様なにさまなのぉ?

「チャンスって何よ?」

「今年の総合会議の時期をずらし、それまでに研究成果を出せるところは生徒会長がそれを拝見して、しっかりとしたものなら存続を許可してくれるんだよ。」

おお!・・・って!?そこまでしないとダメなん!?

「なるほど研究成果ですか。」

「うん。予約制だからなるべく早めにね。」

研究成果って・・・オカルト研究会の?そんなのあるの?

「そんなこと言われても・・・あんの?式子。」

「式子さん?」

「前にも言っただろう。このオカルト研究会にあるのはこの日誌だけだ。」

ですよね~。

「んじゃどうすんのよ?このままじゃそのチャンスも使えないじゃない!」

「今からやるしかないでありマスな。」

「い、今からって!?そんなすぐに出来るもんでも・・・。」

「いや、千夏の言う通りだな。」

え?式子さん?

「ちょっと本気!?」

「やるしかないだろう。皆、日程を教えてくれ。」

式子さんが広げたカレンダーに予定のある日を皆がそれぞれの色ペンで印をつけていく。

こう見ると・・・僕って予定ないな!うん!

「千夏はかなり予定が入っているな。」

「あははは。そのほとんどが生徒会長との勉強会でありマスけどね。」

「千夏あんた・・・。」

「・・・ふっ。柑奈殿、自らを犠牲にできぬ者に軍を名乗る資格は無いでありマスよ。」

「千夏!!」

感動的な場面のところ申し訳ないけど、今はそんな場合じゃないからね?




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