第384話 食休みの話し~おおきなかお 後編~
「Aちゃん?」
私はもう一度、妹の見ている方向を確認しました。
けどやはり何もないのです。
「ねぇ、Aちゃん。」
「ん?なぁに?」
「お外に何かいるの?もしかして・・・ネコちゃん?」
「ううん。」
「じゃあ何もいないの?」
「いるよ!」
「えっと、何がいるの?」
「おっきなお顔のおじちゃん!」
「へ?」
「まどいっぱいのおおきなかお!」
妹の言っていることが分かりませんでした。
お爺さんなんてこの家にいませんし、何より窓一杯の大きな顔。
そんなの人じゃなく化け物です。
「・・・あっちで遊ぼうか。」
妹の言っていることを信じてはいませんでした。
けれど、気味が悪かったので縁側ではなく部屋の中で遊ぶことにしたんです。
「ほ~ら!お城が完成するよ!」
「やった~!」
「最後にこのてっぺんに三角の積み木を置けば完成!えっと・・・あれ?」
「どうしたのおねえちゃん?」
「積み木が一個足りないの。きっと縁側に落としてきたんだよ。取ってくるね。」
箱から出した覚えはなかったのですが、私が見ていない間に妹が出したのだと思いました。
縁側に行くと、ぽつんと積み木が置いてあるのが目に入りました。
「あったあった。」
積み木を拾って顔をあげた時です。
目の前に窓一杯の大きな顔のおじさんが見えたんです。
「・・・え?」
自分の理解の範疇を超える出来事が起きると、頭が追い付かず恐怖すら感じないのだと思いました。
私は悲鳴を上げることなく、目の前のおじさんを見ていたんです。
『ぼ?』
そんな風なことを言ったような気がしました。
我に返ると、目の前におじさんはいなかったのです。
「おねえちゃん?」
振り返ると、妹が心配そうに私を見ていました。
「どうしたの?」
「う、ううん。何でもない。」
「もしかして・・・みえたの?」
「え!?」
妹が見ていたのは、あのおじさんだったのかもしれません。
あれ以来、私たちは縁側で遊んでいないのでおじさんを見ていません。
今もあそこで見えるのでしょうか?
「こんな話よ。」
「面白い話ですね。何か害があるとか、怖い思いをしたとかそういう感じでもない。ただただ見えた。そういう話ですね。」
「でも不思議よね。最初は妹だけが見えていたのに、後から見えるようになったのよ?結構不思議じゃない?」
「ふむ。実はこういう話もある。幽霊が見えるのはたまたま波長が合ったからだけではなく、幽霊自身が我々に見えるように波長を合わせてきた。そんな話だ。」
「へ~。つまり幽霊がお姉さんにも自分を見せてきたってことですか?」
「ま、そんな話もあるということさ。」
「結局、不思議な話しに変わりはないわよね~。」
でも、こういう怖いようで怖くない話も僕は好きですけどね。
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