第176話 柑奈さんの怖い話~先輩の見ていたもの中編その3~
「変だと思いませんか?」
「ん~どうなんだろうな。」
先輩の不可解な行動が頻発してすぐに私は社長に相談しました。
社長は私の話をしっかりと聞いてくれましたが、本人が相談してくれるまで様子を見ようということになりました。
秋ごろになると、秋晴れの天気のいい日が続きました。
その頃には、先輩は毎日のように何か外を伺うように毎日のようにキョロキョロしていました。
出来る男として社長も頼られていた為、ミスも目立つようになり頬や体が痩せ始めた頃に、社長は飲みに私と一緒に先輩を誘ってくれたのです。
「社内でも君を問題視するような声が挙がっていてね。君のことだからと僕は余り気にしていなかったが、流石にな。」
「申し訳ありません。」
「その、なんだ。こう言うことを言ってはいけないんだが、僕は誰よりも社内で君を信頼している。実力もそうだが、君は僕の目指そうとしている会社に一緒に動いてくれる人物だ。だから、悩みがあるなら・・・。」
「・・・すみません。」
「先輩、私も先輩の力になりたいです!」
「A・・・。」
「先輩には大変お世話になりましたし、その、あの、先輩に恩返ししたいんです!」
「・・・。」
「Aさんもこう言っているんだ。僕やAさんを信頼して話してくれないかい?」
先輩は話すかどうか悩んでいる様子でしたが、小さく口を開いてこう話したんです。
「男が・・・飛び降りているんだ。」
それは何気ない日のことだったそうです。
先輩が言うには天気のいい日の昼頃になると、窓の外から強い視線を感じるそうです。
それに好奇心を煽られて窓の外を見ると、飛び降りていく小さな人間が見えたんだそうです。
最初は虫か鳥が飛んでいる程度に思っていたのですが、視線はどんどん強くなるばかり。
何度か見ているうちにそれが人間の形をしていることに気づいた。
その落ちていく人間は先輩が気づくと、途中で止まり何かを言って落ちて行くそうです。
「最初は小さかったあれが、だんだん見る度に大きくなっていって、夏頃には落ちていくあいつの服装や性別がわかるようになったんです。最近では表情までわかってきて・・・あいつ、ニタァって笑って何かを言って落ちて行くんです。」
「その男は天気のいい日の昼間にだけ落ちてきているのかい?雨の日は?時間も決まっているのかい?」
「はい。決まってあいつは晴れている昼頃に現れるんです。」
「先輩、その人はなんて言っているんですか?」
「わからないんだ。」
先輩は何か言っていることはハッキリわかるそうなんですが、何を言っているのかを思い出せないそうです。
先輩がビクッと動いていたのは、落ちていく男性を見つけた時の怯えた反応で、飛び降りた男の行方を探す為に窓から下を見てしまっていたそうです。
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