第336話 百物語合宿~お題:病気 後編~
次の日、俺はおばさんのナースさんに昨日のことを聞きました。
「あ、あの、聞きたいことが・・・。」
「ん?なぁに?」
「この病院って、俺以外にも子供が入院してるんですか?」
「え?・・・あ~あ。いた、かもね。」
歯切れの悪い言葉。
俺は根拠のない自信で、おばさんナースが嘘をついていると確信しました。
そのことを裏付けるように他のナースさんにも聞きました。
けれど、どのナースさんも何となく歯切れが悪い。
(なんか隠してるのか?でも昨日のは夢じゃないし・・・。)
気になった俺はその日の夜もトイレに行きました。
「やっぱり。」
案の定、昨日と同じようにナースステーションは無人でした。
俺は個室に入り、昨日の影が来るのを待ちました。
ペタッ。ペタッ。ペタッ。
入って数分。
昨日と同じ足音が近づいてきました。
そして昨日と同じように隣の個室に入ったのです。
「本当はダメだけど・・・。」
俺は便座に昇り、個室の上から中を覗きました。
そこで目にしたのは・・・。
「ひっ!?」
真っ黒な黒い影。
目の部分だけハッキリと眼球があり、その眼球は俺を見ていました。
俺は落ちそうになりながらも全力で走り出しました。
走って、走って、走って。
かなり走っているのに全然進んでいる感じがしません。
「な、何で!?」
訳が分かりませんでした。
走っているのに全く前に進んでいないのです。
ペタッ。ペタッ。ペタッ。
後ろから近づく足音。
逃げているのに足音はどんどん近くなっている。
ペタッ。ペタッ。ペタッ。
「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
叫んだ時でした。
「ど、どうしたの!?」
俺の目の前に急にナースさんが現れ、俺は受け止められる形で走るのを止めました。
「あいつが!?あ、あいつが!?」
「あいつ?あいつって誰のこと?」
「あいつだよ!!?」
振り返って指をさしたのですが、誰もいませんでした。
「誰も、いないけど?」
何が起きたのか、全くわからなくて、俺は気を失いました。
「・・・ん?」
目を覚ますと、俺は病室にいました。
「あ?目が覚めた?お腹の調子はどう?」
お昼過ぎまで眠ってしまったようで、起きたら母親がいました。
「・・・あれ?」
不思議とお腹の痛みは消えていました。
あれは何だったのだろうか。
気にはなりましたが、退院した後も俺は誰に聞けていません。
「以上でありマス!」
・・・うん。これは、その・・・。
「あ~これってありなの?式子。」
「そうだな・・・。」
き、厳しいなぁ。
お題の“病気”を満たしているような満たしていないような、微妙だ。
「・・・まぁ、炎症が出ていたしアリでいいだろう。」
「ふふん!当然でありマス!」
「ま、罰ゲームは優にしたいしね。」
おい。今のは聞き捨てならねぇぞ?
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