第371話 百物語合宿~お題:犯罪 中編その1~

盗撮がいけないことぐらい、自分にもわかってはいます。

もちろん、高校時代の自分も。

けれど、やってはいけないことをしている背徳感や、バレずに他人の行為を盗み見る高揚感。

楽しくて、愉しくて、しょうがなかったんです。

それに、ラブホという小さな世界で繰り広げられる様々な性事情。

カップルの性行為や不倫、浮気に援助交際。

見ていて飽きる要素がありませんでした。

一度、盗撮に成功してしまうと歯止めがきかなくなってしまい、多い時には一気に10部屋ぐらいは盗撮していました。

「ふひひ。これってもしかして高く売れるんじゃないか?そうすればもっともっと高性能なパソコンやカメラを買って・・・いや、カメラの台数を増やすのも・・・ふひひ。」

そんなことを考えている日々。

あいつは、突然現れたんです。

「今日もラブホはハッスル祭りですなぁ。羨ましいなぁ。おっと、5番のカメラに生体反応アリ!ふひひ。これはこれは・・・また冴えないおっさんだなぁ。」

部屋に入ってきた細身の男性は、40代ぐらいで、くたびれたスーツの辛気臭い背中をカメラに見せました。

男性は一人で入ってきて、スーツとかを脱ぎ散らかしていました。

「おや?御一人様?いや、これは後から女の子を呼ぶパターンかな?ふひひ。面白そうですなぁ。」

自分は他のカメラには目もくれず、その男性の映る5番のカメラに釘付けになっていました。

男性は風呂に入ってテレビを見ながらビールを飲むと、すぐさま眠ってしまったのです。

「なんだ。ただのホテルの利用者か。他のは・・・おや?」

一瞬だけ。ほんの一瞬だけ目を離した隙に5番のカメラにセーラー服を着た女の子が立っていたのです。

「女子高生?・・・ふひひ。やっぱりお楽しみを期待していたんですなぁ。この男もやりおるわ!どれどれ・・・。」

女の子はしばらく入り口で立っていると、ゆっくりとベットで寝ている男性の近くに歩き始めたのです。

「睡眠プレイってやつかなぁ。初めて見るなぁ。ふひひ。」

自分はワクワクしながら見ていました。

すると、女の子の手に光るものが一瞬だけ見えたんです。

「ん?」

女の子は男性の上にまたがると、光るものを手に両腕を振り上げたのです。

「・・・え?」

それが包丁だって理解した時には遅く、女の子は男性に向かって振り下ろしていました。

「ひっ!?」

ゆっくりと染み出す血。

休むことを忘れたように何度も、何度も同じ場所を繰り返し指し続ける女の子。

男性は苦しんだ様子も、恐怖に歪んだ顔もない。

けれど、口元から流れる血を見て・・・即死だったんだと思いました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る