第205話 式子さんの怖い話~佇む女の理由は。中編その2~
「ったく。なんなんだあの店員。幽霊なんている訳ねぇだろ。なぁ?」
「う~ん。僕はそうは思いたくないかな。」
「え?なに?Cってそういうの信じるタイプ?あの店員の話しも信じたわけ?」
「そうじゃないよ。客観的に考えるとさ、あの店員さんが僕らを怖がらせる意味がないでしょ?お客が少ないって言ってたし。」
「まぁ、そりゃあな。」
「でしょ。それにあの店員さんの話を信じたんじゃなくってね。幽霊はいて欲しいなって思ってるんだよ。僕は。」
「マジ?」
「うん。だって幽霊がいないって思っちゃったら守護霊様もいないことになっちゃうでしょ?僕、守護霊様にはいて欲しいなぁ。」
「あ~なるへそ。そう考えたら俺もいて欲しいわ。先祖の守護霊だけはな。悪霊はご免だ。もちろん怨霊もな。」
「それは僕もだよ。」
そんな話をしているうちに俺たちはアパートについた。
入り口の階段のところで荷物をいったん置いて、傘をたたんでいる時だった。
「うわぁ!?」
突然Cが悲鳴を上げたんだ。
「え!?ちょ!?なに!?」
「ご、ごめん!ちょっとびっくりして・・・。」
「脅かすなよって!?え!?」
Cが何に驚いたのか気になって視線の先を見ると、そこには女が佇んでいた。
俺たちの視線の先、階段奥の駐輪場に続く通路に。
「だれ、かな?」
丁度薄暗い通路の電灯の下に、女は一人で立っていた。
30代、いや40代くらいかもしれない。
黒くて長い髪をゆらゆらと垂らし、全身黒尽くめの格好。
真っ黒な髪も相まって駐輪場の暗闇を背にすると白い肌が目立ったんだ。
まるで、顔と手だけがが浮かんでいるみたいに見えたんだ。
「えっと、声、かけたほうが良いのかな?」
「止めたほうが良いんじゃねぇか。」
あの時の印象はただ一言・・・不気味だった。
あの女はその場でじっと立ち尽くしたまま、こっちを見ているんだ。
正確に言うと違う。
顔と目はこっちを向いているが、俺たちを見ていない。
ぼーっと、何処か遠くを見ているような感じだ。
「・・・そうだね。」
不気味さをCも感じたんだと思う。
「ま、まぁ、軽い挨拶だけするか。」
内心ビクビクしながら俺たちは小さく会釈して彼女の横を過ぎ、二階のBの部屋に向かった。
俺たちはの部屋に入るなり、さっきの女の話をした。
「はぁ?女が立っていた?」
「あ、ああ。なんていうか、不気味な感じだった。」
「僕も、同じ印象だよ。
「怖っ!!てか、ん?あれ?」
「どうしたんだよB?」
「・・・いや~このアパートに女性っていたかなって。なんていうか、覚えてねぇんだよなぁ。」
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