第412話 式子さんの怖い話~ 嘘だろ・・・。前編~

「優君は、自分が‟自分である”とどうやって証明する?」

秋も深まり、来る体育祭に憂鬱な気持ちになっていた今日この頃。

突然式子さんからよくわからない質問をされた。

・・・いやマジでわからん。

「えっと・・・。」

「例えばだ。今君がここからトイレに向かったとする。そしてここに戻ってきたとして、果たしてそれは先程と同一人物の優君だと言えるかい?」

「はいぃ?おっしゃってる意味が分からないんですけど・・・。」

「ふむ・・・そうだな。この話を聞いてもらってから再度同じ質問をさせてもらおうかな。」

この流れで怖い話をされるのも何となく釈然としないけど、聞けるんだったらいいか。

「それで?どんな話なんですか?」

「これはとある大学生たちが体験した話だ・・・。」


「・・・あちぃぃ・・・。」

夏の日差しがギラギラと照り付ける公園で男子学生3人で集まっていた。

「何が悲しくてお前らとここにいなきゃなんねぇんだよ。」

「それはこっちのセリフだ。お前が映画を見に行こうって言うからついてきたってのに、肝心の財布を忘れるか普通。しかもお目当ての映画はまだ公開前出し。」

「うるせぇな。」

「しっかり調べてから誘えよな。Yだってここまで運転してきたのに意味ねぇじゃん。なぁ?」

「俺は別に。」

財布もなく、映画も見れず、ただ帰るだけなのも嫌だったので3人は近くの公園でおしゃべりをすることにしました。

ところが、夏の日差しの強さに早々に嫌気を差していました。

「とにかく早く涼しい場所に移動しようぜ。こんな暑くちゃ誰も公園になんか来ねぇしな。」

「同感だな。」

暑さに耐えきれず、3人はショッピングモールへと足を運ぼうとしました。

すると、木陰のベンチに一人の老人が座っていたのです。

ニコニコとこちらを見ている老人にAは声を掛けました。

「おじさん、俺たちになんか用か?」

「バッ!?声かけんなって!!?」

「いいじゃんか別に。どうせ用事もねぇんだからさ。」

「ハハハ。お前らが暇そうに見えたんでな。良い事を教えてやろうかとな。」

「良い事?何だよそれは。」

ニヤァっと笑った老人は、まるで最初っから用意されたようなセリフのようにスラスラと3人に廃遊園地の場所を教えたのです。

「そんなところに潰れた遊園地があるのかよ?」

「昔はそれなりに人が来ていたんだがな。一度廃れ始めると一気に消えていったわい。お前らのような若者はこういう場所に興味を持つんだろ?」

「・・・まぁ、否定はしないけど。」

「暇してるんなら行ってみるといい。」

3人は老人の言う通りに廃遊園地に向かったのです。


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