第144話 柑奈さんの怖い話~赤い飴玉中編その2~
「なぁに?パパ。」
「もし、絶対にあってはならないが、飴玉を貰ってしまっても、決して食べるんじゃないぞ。いいね?」
「ん?わかった!」
「うんうん。柑奈たんは良い子だね~。」
「えへへ。」
「次、柑奈ちゃん。」
「は~い。」
中に入るとね、よくできていたのよねぇ。
保護者たちが張り切っているのがよくわかる出来だったのよ。
真っ暗な道を懐中電灯一つ持って進むと、障子から手が飛び出してきたり、井戸から喪服を着た男性が涙を流しながら出てきたり、包帯だらけの人間が棺桶から這い出てきたり。
色々な怖い仕掛けを抜けると、最後に見覚えのある女性が立っていたのよ。
「あれ?あのひとって・・・。」
その女性は園の外に立っていた人と同じだったのよ。
白衣を身にまとった人で、目は髪で見えなかったけど、とても嬉しそうに笑っていたわ。
ただ、全く怖さを感じなかったのよ。
「・・・ア。」
何か言ったと思うけど、とても小さくて聞こえなかったわ。
けど、その女性は私に飴玉を差し出してきたの。
とっても赤い、飴玉をね。
「えっと、もらっちゃだめだってせんせいが。」
「・・・ウウゥ。」
あたしが貰うのを拒むと、女性は悲しそうな声を出したの。
それが何だか気の毒で。
「・・・ばれなきゃいいかな。」
それぐらい軽い気持ちであたしはその女性から飴玉を受け取っちゃったのよ。
「・・・アイアウ。」
「バイバイ。」
そうして、あたしの肝試しは終わったわ。
「かんなちゃん!」
「のんちゃん!」
「こわかったね!」
「そうかな?」
「そうだよ!」
「あ!そういえばあのひといたね。」
「あのひと?」
「うん!あのおんなのひと!」
「・・・え?」
「え?」
「かんなちゃん、いるはずないよ。」
「なんで?いたよ。」
「だって・・・ママたちはみんなおりょうりしているんだよ?」
そう、この時気づいたのよ。
お化け屋敷の中にはみんなの父親しかいないということを。
それはママたちがみんなおばちゃん先生の指示でお化け屋敷に近づいていないから。
のんちゃんの言葉で、あたしはとんでもないことをしてしまったとわかったの。
「ど、どうしよう・・・あたし・・・。」
「かんなちゃん?」
「ううぅ・・・ひっぐ・・・えっぐ・・・。」
「か、かんなちゃん!?」
「かんんんなああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「パパ!」
「どうした!?何があった!?何で泣いてるんだい!?どこか痛いのかい!?それとも転んだのかい!?どうしたんだい!?かんなたそぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「パパ、落ち着きなさい。」
「ママ!」
「柑奈、何があったのかお話ししてください。」
あたしは正直に赤い飴玉を貰ってしまったことを話したのよ。
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