第410話 柑奈さんの怖い話~土下座の謎 中編~

あの出来事があってから半年、祖父が突然亡くなりました。

病気や怪我などの話しは聞いておらず、お盆の時も元気だったから本当に驚きました。

親戚一同だけ集まり、祖父の葬式が執り行われました。

「ねぇ、聞いた?あの話し。」

火葬中、暇つぶしに歩いていると母方の伯母さんたちが話しているのが聞こえてきました。

「あの話って?」

「なんか変な話よ~。○○さん、布団の上で土下座して亡くなってたんだってさ。」

「え!?ど、どういうことなの!?」

「一応、死因はくも膜下出血なんだけどね、見つかった時は土下座していたんだって。変でしょ~。」

「やだわ。不気味ね~。」

どうやら祖父は発見された時、布団の上で土下座していたんだそうです。

葬式が無事に終わり、親戚がぞろぞろと帰って行く中、僕たち家族だけ祖父母の家に一泊しました。

葬式の後ということもあり、家の中はとても静かでした。

僕自身も何処かへ遊ぶに行こうなんて思わず、その日はずっと家の中で過ごしました。

その晩、僕がトイレで起きると、今の方で怒鳴り声が聞こえてきました。

恐る恐る近づいて中を見ると、僕の両親と祖母がいました。

「母さん、何度も言うけどいないもんはいないんだよ。」

「そうですよお義母さん。」

「あんたたちはなんもわかっちょらん!あたしはしっかりと、この耳で!聞いちょったんや。じい様が亡くなる直前、誰かに何度も何度も謝っちょるのを。」

「だから誰に?」

「だ・か・ら!あれは間違いなくM子にじゃ。そうに決まっちょる!」

「M子って・・・それって亡くなった俺の姉さんだろ?亡くなってるのにどうやって謝るんだよ?」

「M子がこの家に来たに違いない。つ、次はあたしの番かもしれん。」

「何でだよ。姉さんがどうして母さんや父さんを?意味が分からないよ。」

「それはじい様に聞いちょるだろ!」

「それは・・・。」

「あなた、何の話し?」

「いや・・・。」

それ以上は何だか聞いてはいけないような気がして、僕は布団の中へ戻りました。

あれから半年、祖母が亡くなりました。

祖母は持病があった為、亡くなったことには何の疑問もありませんでした。

けど、親戚一同皆が、父を責め立てました。

「いったいどういうことか説明しろ!」

「兄さんは何か知ってるんじゃないの!?」

「その・・・いや・・・。」

父が責められている理由、それは祖父に続いて祖母も布団の上で土下座するように亡くなっていたからです。

死因は心臓発作。けれど、祖父も祖母も布団の上で土下座をするように亡くなっていた。それが親戚皆に、この家が呪われているんじゃないかって不安を煽ったのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る