第68話 麒麟園さんの怖い話~猿夢中編その1~
扉が閉まる前にAさんは適当な席に座りました。
そして誰も降りることなく、電車は動き始めました。
「あれ?」
席に座った瞬間、Aさんは生温かい空気を感じ、訝しみました。
「夢なのに何で?変なの。」
もしかして夢じゃないのかなと一瞬だけ疑いましたが、そんなはずはないとAさんは自分に言い聞かせました。
発車した電車は真っ暗なトンネルのような場所を進んでいきます。
窓の外を見ても真っ暗で何も見えないので、Aさんは何が起きるのかを考えることにしました。
『それでは~入りま~す。』
先程と同じようなアナウンスが流れると、ふわっとした紫色のような明かりが真っ暗なトンネルの中を照らしました。
「何か始まるのかな?」
期待に胸を膨らませて待っていましたが、Aさんの期待するようなことは何も怒りません。
「何だよ~これだけかよ~。もしかして小さい頃に何処かの遊園地で乗った乗り物の記憶だったの?じゃあこのまま進むだけ?景色も何もないの?マジか~。」
がっくりとAさんが肩を落とした時、またしてもアナウンスが流れました。
『え~次は~次は
「はぁ?いけづくり?何それ?」
窓の外を見ても真っ暗なだけで何も見えません。
すると、急に後ろから男性の悲鳴が聞こえてきました。
「え!?」
振り向くと、電車の一番後ろの席に座っていた男性の周りには四人のぼろ布を着た小人が群がっていました。
「いったい何を・・・!?」
目を凝らしてよく見ると、男性は刃物でお腹を裂かれ、魚の活けづくりの様にどんどんなっています。
強烈な臭いがAさんをの鼻を襲い、耳が塞ぎたくなるほどの大声で男性は悲鳴をあげ続けました。
次第に悲鳴は聞こえなくなりました。
もう一度男性を見ると、小人たちは次々と内臓をとり出し、辺りを血まみれの臓器で汚しました。
Aさんは見るのが怖くなり、視線をずらすと目を見開きました。
何故ならAさんのすぐ後ろに座っていた髪の長い女性は何も聞こえていないのか、何事もない様子で前を向いて座っているのです。
すぐ後ろで男性が先程まで騒いでいたのにです。
「これは流石に・・・やばい、かも?」
Aさんの想像を超える夢の内容に、Aさんは恐怖を感じ始めていました。
けれど、おかしなことにAさんはもう少しだけ見てみたいと思ってしまったのです。
「だ、大丈夫。私の夢なんだから起きれるって!うん!大丈夫!・・・たぶん。」
Aさんはなんとなく確認してみたくなり、チラッと後ろを見ました。
すると男性はおらず、男性がいた場所には赤黒い血と肉の固まりのようなものだけが残っていました。
Aさんは慌てて目を逸らしました。
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