第253話 神楽坂さんの怖い話~何が落ちた?中編その1~

けれど、そんな楽しい入院生活がいつまでも続くわけもなく、私が入院してから

たった2週間程で、同じ病室のAさんとBさんが退院する事になりました。

「寂しくなるね。」

「う、うん。」

「けど、いい事だもんね!寂しがってばかりいられないね。」

「うん。あのね・・・。」

「なぁに?」

「私も、寂しいけど、Iさんがいるから頑張れるよ?」

「Cちゃん・・・愛い奴め!」

AさんとBさんが退院したことで、私とCさんはそれまでAさんとBさんが使っていた窓際のベッドへ移る事になりました。

「ん~Aさんの香り~。」

「なんか変態っぽいよ?」

「ぐへへ~Cちゃんの匂いも嗅ぎたいな~。」

「や、やめて~。」

年上ということもあって、私はCちゃんに寂しい思いさせないように笑わせることに努めていました。


AさんとBさんが退院した次の日の夜、いつも通りCちゃんとおしゃべりしてから眠りました。

けどその日、私は夜中に変な物音で目が覚めました。


コツコツ。


「・・・んぅ?」

目を覚まし、辺りは真っ暗。

夜の病院程怖い場所はないんじゃないかと思えるほどに不気味で、とても静かな空間。

私は気のせいと思い、もう一度眠りに付こうとすると、それを邪魔するように聞こえてきました。


コツコツ。


「・・・やっぱり聞こえる?」

コツコツと硬い物を叩く音が、どこかから聞こえてくるんです。

「もしかして・・・Cちゃん?」

Cちゃんが何かしているのだろう。

そう思って、ベッドの仕切りカーテンを開けましたが、Cさんのベッドは明かりがついていません。

「Cちゃ~ん・・・。」

Cちゃんには悪いと思いながらも、仕切りカーテンを開けると、可愛らしい寝顔が見えるだけで、特におかしなことはありません。

「やっぱり気のせい?」

気がつけば、先程まで聞こえていた音も聞こえません。

私はとても眠かったので、気にせずにそのまま朝まで眠ってしまいました。

翌朝、何事もない一日が始まり、何事もなく終わりました。


コツコツ。


しかし、またしても昨日と同じような時間に、同じような音が聞こえてきたんです。

「また?」

眠りが浅くないと思う私ですが、不思議とあの音が聞こえてくると目が覚めるのです。


コツコツ。


「何なの?」

その日も私は音を無視して再び眠りにつきました。

でも、あの日以来、あの音は毎晩のように聞こえ始めたのです。

時間も毎回深夜3時頃。

何度確認してもあの音の出どころがわかりません。


コツコツ。


「はぁ。本当になんなの?」

何日か経って、私はあることに気づきました。

それは、音が聞こえた時、窓の方を向くと途端に音が止むということです。

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