第444話 神楽坂さんの怖い話~俺の信じてもらえない話 前編~
「と、いう訳でこの前は酷い目に遭いましたよ~。」
「ふふ。それは災難だったね。でも、あんなに凄い吹雪だったのに休みだとは思わなかったのかい?」
「いやそれは・・・。」
学校の連休明け、僕はいつも通り部活に参加して式子さんと談笑していました。
するとそこへ、呼ばれざるお客が姿を見せたんです。
「やぁ!子猫ちゃんアンド子犬ちゃんたち!」
そう、神楽坂さんが姿を現したのです。
「やぁ、星夜。今日はいつになくテンションが高いね。」
「ンフフ。そうだろう。実はとても面白い話を仕入れてね。式子たち、特に子犬ちゃんに話を聞いて欲しくてね。昂る気持ちを抑えきれないんだよ。」
ちょっと待て!股間を手で押さえるな!!
「ふぅん。面白い話、ね。それはどんなのだい?」
「ンフフ。誰も信じてくれない話さ。」
「はい?誰も信じない話、ですか?どういう?」
「実はこの前合コンを開いてね。いつも通り俺は怖い話を披露したのさ!」
いつも通りって・・・どんだけ合コン開いてんだよ。
「そうしたら、参加者の男性が話してくれた怖い話があってね。けど、誰も信じてくれなかったんだ。特に男性は。」
「男性が、ですか?その話っていったい・・・。」
「ふふ。優君、気になるなら聞いてみよう。」
「・・・ですね!」
「ンフフ。では、披露しよう!これはとある男性が話してくれた怖い話し・・・。」
俺が現在進行形で体験している話は誰も信じてくれない。
特に男性陣からはブーイングが飛んでくるほどだ。
だが、俺は決して嘘はついていないんだ。
そうだな。彼女との出会いは、社会人になったばかりの春だった。
母子家庭で育った俺にとって、一人暮らしは憧れだった。
だから大学時代は遊ばず、勉学とバイト漬けの日々。
そんな俺も社会人になり、不動産を経営している叔父に紹介されて入居したのが今でも住んでいる平家の貸家だった。
「今日からここが俺の家か~。くぅ~!」
運び込まれていく荷物を見ながらこれから始まる一人暮らしに胸を膨らませていると、電話がかかってきた。
「はい?もしもし?」
『もしもし?私だけど、どう?荷解きぐらいは始まった?』
「いいやまだだよ。今着いたところだから。」
『ねぇ、やっぱ母ちゃんも手伝いに行くよ?叔父さんが言っていたことなら気にしなくても・・・。』
「いいよ母ちゃん。そういう条件で安くしてもらったんだからさ。それに、これからは親孝行をしていくつもりだからさ!」
叔父さんがこの平家を破格の値段で貸してくれたのには訳があった。
それはこの平家に“絶対に女性を入れない”ことだ。
それは例え母親であってもだ。
真剣な顔で言う叔父に、このことについて疑問を投げかけることは出来なかったが、自分なりに答えは出ていた。
それは、これまで苦労を掛けてきた母親にこれからの親孝行と、しっかりと一人でも生活できるということを証明して安心させろっということだと、この時は思っていたんだ。でも、そうではないことに気づくのにそう時間はかからなかった。
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