第443話 高橋君の聞いた怖い話~サッカー部の寮 後編~

「あの女、いつまでいるんだろうな。」

「んなことより目的だろ?あれからこっちには近づいてきてねぇけど、何がしたいんだかわかんねぇんだからよ。」

「不気味、だよね。こうやって女を見れば、恐怖を感じるし、気にもするけど、見なければ気にならなくなってきてるし。」

「それな!先輩たちも気にするなの一点張りだしよぉ。」

僕たちの限界も近かったと思います。

女を見なければいいだけなのに、どうしても吸い寄せられるように窓から女を見てしまい、こうやって集まって話し合う。

こんなことの繰り返しで、睡眠不足にもなるし、全く休めない。

次第に僕らは退寮も考え始めていました。

そんな時に事件は起きたんです。


「もう我慢ならねぇ!!あの野郎ぉ!!」

食事中でした。同級生の一人がそう叫ぶと、包丁を手に持ったんです。

「お、おい!」

「止めんなッ!殺すぞッッ!!」

止めようとした矢板君に包丁を向け、脅すと、そのまま外へ飛び出していったんです。

周りのみんなが困惑する中、僕だけでも様子を見ようと立った時です。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!?!?!!?」

出て行った同級生の叫び声が聞こえてきました。

慌てて外へ出ると、暗くてよく見えませんでしたが、同級生が倒れているように見えました。

「お。おい?大丈夫か?」

懐中電灯で照らすと、同級生は血だまりの上で倒れていたんです。

言葉にならない叫び声を、僕たちはあげてしまいました。



「その後、叫び声を聞いた教師たちが事態を重く受け止め、サッカー部の寮を閉鎖したんだとよ。」

「と、いうことはその同級生は・・・。」

「亡くなっていたそうだ。」

「マジか・・・。」

「だがな、ここからが不思議な話だ。実はこの話しにはちょっとだけ後日談がある。」

「後日談?」

「まず、中学生が亡くなったのに、このことは新聞には載らなかった。変だろ?」

「そうだな。名前は載らないまでも事件そのものは載ると思うし、学校側の力だけじゃ揉み消せねぇしな。」

「ああ。実はな、死因が心臓麻痺らしいんだ。」

「心臓麻痺って・・・んじゃ血痕は?」

「同級生の血液型とは一致しなかったばかりか、同級生の遺体には傷が無かったらしい。加えて、持ち出されたはずの包丁が消えたんだそうだ。」

「包丁はともかく、じゃあ誰の血だったんだ?」

「わからん。最も、誰の血か調べようが無いしな。おまけに小森が見た血だまりはかなりの大きさだったそうだからな。人だったらそいつも死んでるだろう。」

「謎が謎を呼ぶ怪奇事件か。式子さんが好きそうだな~。」

「ふふふ。後日談は続くんだよ。実はこの日以降、女の幽霊は姿を見せて無いんだ。」

「・・・は?マジか?」

「理由はわからんけどな。」

満足したのか?それとも何かしらの条件のようなものがあるのか?

わからないけど、ゾクゾクする話を高橋にされたことがちょっとだけ悔しいのは確かだな。

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