第270話 短編怖い話~いわくつきの旅館後編~
怖い思いをしながらも入浴場に着くと、ニッコリと笑うお婆ちゃんが受付をしてくれました。
「ねぇ、夜の入浴はいけないんじゃなかったかしら?」
「申し訳ありません。お客様のお願いですので、大目に見ていただけませんか。」
「そうねぇ。そういうことなら仕方ないわよねぇ。」
申し訳ない気分になりながら私は脱衣所で服を脱ぎました。
不気味なぐらい静かな浴場は、よくわからない嫌な感じがして。
(貸し切り・・・だよね?)
そんな冗談みたいなことを思いながら、急いで頭を洗い、体を洗うことにしました。
頭をワーって洗っている時です。
何となく、人の気配がしたんです。
(気の、せい・・・?)
薄っすら目を開けると、隣の席に足が見えたんです。
(あ、やっぱり人がいた。やっば。泡飛ばしちゃったかな。)
「ご、ごめんなさい。もしかしたら泡を飛ばしちゃったかもしれないです。」
「・・・。」
けれど反応はなく、何だか気まずい気持ちになりました。
(やらかしちゃったかなぁ。もう一度謝って・・・そういえば、扉の開く音って聞こえたかな?)
変なことを考えてしまって、それを振り払うようにシャワーで泡を流してもう一度謝ったんです。
「本当にごめんなさい・・・って、あ、あれ?」
けれど、隣には誰もいませんでした。
ゾッとしましたが、見間違いだって思い込んで、急いで体を洗ってお風呂に入りました。
「ふぅ~。気持ちいいなぁ。・・・ん?」
ホッと一息ついている時です。
ぼそぼそと何か、話しているような声が聞こえたんです。
何を言っているかはわかりませんでしたが、4~5人で話しているような感じでした。
最初は聞こえないふりをしていたんですが、だんだんと声が大きくなっているような気がして、私は耳を塞いだんです。
(気のせい気のせい気のせい気のせい気のせい気のせい気のせい気のせい気のせい気のせい気のせい気のせい・・・。)
念仏のように唱え、私はお風呂から出ようとしました。
すると、私の後ろに足がたくさんあったんです。
「・・・え?」
どの足も泥だらけで、まるで土の中から出てきたみたいに汚れていました。
(ッ!!?!?!!?!?!?!??!?)
叫びそうになるのを必死に堪え、私は逃げるように出ました。
風呂から出ると、あの仲居さんはおらず、お婆ちゃんが飲み物を用意してくれました。
「あ、ありがとう、ございます。」
「うふふ。いいのよ。お友達の分もここに置いておくわね。」
「はい・・・え?」
お婆ちゃんはコップを5つ置いて戻って行きました。
私は、逃げるようにその旅館を飛び出し、カラオケボックスで夜を明かしました。
荷物はAさんが持ってきてくれました。
Aさんは何も聞かずに、そっと抱きしめてくれました。
今でも、私はバスガイドの仕事を続けていますが、二度と旅館には止まれそうにありません。
「以上で、本日の怖い話を終わりにします。皆さんの身近にも、このような体験があるかもしれませんね・・・。」
うむ、実に有意義な時間だった。
どの怖い話も素晴らしく、僕を満足させてくれるものだった。
「明日、式子さんと話そう。」
明日のオカルト研究会の活動が楽しみだ!
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