第367話 百物語合宿~お題:赤ちゃん 中編~

「ふむふむ。」

「ど、どうなんですか先生?娘は・・・。」

「特に異常はないですね。いたって健康です。」

「そ、そうなんですか?」

「で、でも先生、妻の話しでは夕方毎日泣いてるって・・・。」

「ん~・・・単にぐずる時間が重なっただけではないでしょうか。健康状態に以上は無いですしね。」

町医者の結果は異状なし。

だから少しだけ安堵したんですが・・・。

「おぎゃあ!おぎゃあ!」

「どうしたの~?」

やっぱり決まった時間に泣くのです。

「う~んミルクでもない。おむつでもない。どういうことなの?」

お手上げになった私は、娘を連れて実家の母を頼ることにしたのです。

「そう。夕方に毎日ね。」

「そうなの。どうすればいいのかわかんなくて・・・。」

「お医者様は問題無いって話よね?」

「そうなの!でも、だったら何なの?ってことになっちゃって。」

「そうよねぇ。検査の難しい病気って可能性もあるのかしら。」

「え!?た、大変!?ど、何処か大きな病院に行った方が!?」

「落ち着きなさい。母親であるあんたがしっかりしないで誰がしっかりするの!」

「ご、ごめんなさい。」

「とにかく。もう一度病院に診てもらって・・・あら?」

「どうしたの?」

「もう、夕方よね?」

「え?」

窓の外を見ると、太陽は既に半分近く沈んでいる感じがしました。

「でも、Aちゃんは泣いてないわよ?」

「っ!?ほ、本当だ!?」

夕方のこの時間、いつもなら泣いている娘が心地のいい寝息で眠っているのです。

母は娘に近づいて様子を見ましたが、普通に眠っているようにしか見えないと言われました。

「・・・もしかしてだけど。」

母は深刻そうな顔になると、電話を取り、何処かに電話していました。

電話越しに何度も頭を下げると、母は真剣な顔で私にこう言いました。

「落ち着いて聞きなさい。もしかしたらって思ったんだけどね・・・。」

母は心霊的な何かなのではないかと、疑い始めたのです。

私はそうは思いませんでしたが、母が次の日お坊さんを呼んでしまったので、とりあえず会って話だけでも聞くことにしたのです。

「この子がAちゃんですかな?」

「はい。」

「どれどれ・・・ふむふむ・・・ほほお。」

「どうですか?やっぱり孫は・・・。」

「うむ。見えているのでしょうな。」

「え?どういうことですか!?」

「一歳になるまでのお子さんは霊感がとても強いのです。もちろん例外もありますが、この子はしっかりと霊感があるのです。」

「む、娘は大丈夫なんでしょうか!?」

お坊さんは笑顔で頷いてくれました。

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