第366話 百物語合宿~お題:赤ちゃん 前編~

「自分のお題は“赤ちゃん”で、ありマスか。う~む。なかなかに難しいお題でありマスな。」

「そうですね。赤ん坊の幽霊なのか、はたまた赤ちゃんが体験した話なのか。色々ありますよね。」

「ふむ。このお題を出したのは柑奈かな。」

「正解よ。もっとも、あたしが話したかったけど。」

「ん~・・・では、パスするでありマス。」

「え?」

「千夏、本当にいいの?」

「柑奈殿の話しも気になりますし、何より自分の持ってきたネタには赤ちゃんが出てくるお話しは無いんでありマス。ですので。」

「そ、そう?なんか催促したみたいで悪いわね。」

「いえいえ。」

「では、本来ならば優君だが、今回は特別ということで柑奈に話してもらおう。」

「ええいいわ。」

柑奈さんが用意してきた話っていったい・・・。

「これは、ある主婦の女性が体験した話し・・・。」


あれは、娘が産まれて少し経った頃です。

私の娘はとてもいい子なんだなって思います。

近所の先輩方に色々話を聞くと、「夜泣きが・・・。」という意見が多いにもかかわらず、私の娘は夜はあまり泣かない子でした。

だから睡眠不足で悩んだり、イライラしたりすることもなく、平和に子育てができたと自負しています。

けれど、私の娘には不思議なことがあったんです。

「おぎゃあ!おぎゃあ!」

何故か夕方になると、決まって泣いたのです。

「どうしたの?ミルク?それともおむつ?」

けれど哺乳瓶を近づけても飲もうとせず、おむつも綺麗なままなんです。

「おぎゃあ!おぎゃあ!」

「ん~どうしたの?何か怖い夢でもみたのかなぁ?」

「おぎゃあおぎゃあ!」

理由はわかりませんでした。

この時の私は、単にぐずってるだけだと思っていたのです。

けれど、あまりにも続くので、主人と相談したのを覚えています。

「ねぇ、あなた。」

「ん?なんだ?」

「Aのことなんだけど・・・。」

「A?Aちゃんがどうしたんだ?まさか!?病気か!?す、すぐに医者に!?」

「ちょ、ちょっとまって!違うの。ただ気になることがあって・・・。」

「気になること?何かの障害か?」

「どうなんだろ。ただね、Aって夜はぐっすり眠っているのに夕方は必ず泣いているの。どう思う?」

「夕方はって・・・え?どういうことだ?」

「だから!夕方は毎日のように泣いてるの!」

「・・・それって、何かの病気か?」

「それがわからないから、お医者さんに診てもらった方がいいのかということを聞いてるの。」

「診てもらうに越したことはないだろ。よし、明日は土曜だし、すぐに診てもらおう。」

相談した結果、娘を町医者に診てもらうことにしたんです。

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